第25話 これが私の大阪スキル!

 直接確かめてはいないんだけど、状況的に天王寺さんは無能力者のはずだ。

 何故なら、奴隷だからだ。

 大阪スキルありなら、奴隷にまで堕ちないはずなんだ。

 だって、保護の必要性が無くなるから。


 ……なっちゃんは例外だけどね。

 他人が存在しないと使いようが無いって大阪スキル、そうそう無いだろ。


 だから、彼女はここに助けに来てくれても……


 そこで気づく。ひとつの可能性に。


 まさか……


「そう……私も覚醒したんです!」


 ニヤリ、と笑う天王寺さん。

 とても力強い笑みだった。

 言って、彼女はザッと足を開き、強者の構えを取りながら。


 自分の顔の前に右手を構え、気合を込めて声を発する。


「大阪スキル発動!」


 その瞬間、彼女の大阪スキルが起動し、その右手の中に、長さ50センチ近いスティックが出現する。

 彼女はそれを握り込み、強く振るった。


 まるでショートソードのように。


 それは……桃色で……赤ちゃんの腕ほど太くて……先端が炭化していて……


 超デッカイ電動こけしだった。シリコン製に見える。


 ……おい。女子高生がなんてもの持ってんだ。


「……逢坂さん、偏見の目で見るのはやめてください」


 だが俺のそんな目をものともせず。

 彼女の発したその言葉に、天王寺さんの強い意志を感じた。


 その俺を見る目には、全く負い目が無かった。


 ……一体、どういう大阪スキルなんだ……?


 彼女はそのまま、まるで剣の舞のように優雅に巨大電動こけしを振るい


三つ目の膝ザ・サード!」


 それを両手で力強くデパートの床に突き刺した!


 ……刃物でもないのに、何故かずぶずぶと刺さっていく電動こけし。


 その瞬間


 アアアアアアアアアア!!


 ……デパートから、野太い声が聞こえた。


 その声を聞き、俺は思った。

 これは……喘ぎ声……?


「……逢坂さん」


 床に電動こけしを突き刺したまま。

 天王寺さんは俺に語り掛ける。とても強い瞳で。


 自分の大阪スキルの内容を。


 それは……


「私の大阪スキルは偉人系……その名前は……弓削道鏡ゆげのどうきょう


 え……あの……皇位簒奪を狙った妖僧の……?


 俺は戦慄した。そういやアイツも大阪出身者だったっけ……!


 そして彼女は語り続ける。


「私の大阪スキルで出現したこの電動こけしは道鏡の三番目の膝……これを突き刺した相手は、例え無生物であっても下僕になる……」


 言って、彼女は電動こけしを引き抜く。

 その瞬間、デパートが身悶えした気がした。


 そして彼女は……


「こんな風に!」


 まるで戦場で最前線に立つ戦乙女ヴァルキリーのように、その長くて太い先端の炭化した電動こけしを、敵対者たるあの女に向ける。


 それと同時だった。


 彼女が立っている周辺の床が震え、そのタイルがひとりでに外れていき、そしてまるで手裏剣のように回転しながら敵に向かって突っ込んでいった!

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