第23話 3つ目の技
「ハハハハッ! 小娘がッ! ざまあみろッ!」
そう言って万引き犯……なっちゃんの姿をしていたそいつ……その姿が変わっていた。
どうみても40代から50代くらいのおばさん。
あまり手入れされていない髪の毛に、白髪が混じっていた。
そして……とても醜い、狂笑を浮かべていた。
……おそらく、これがこいつの真の姿なんだろう。
服装もよれよれで、どう見ても部屋着。
緑色のスウェット上下。
それが天王寺さんを殺したときの返り血を浴び、朱に染まっている。
そして、そのまま脱兎の如く逃げていく。
……あいつ!
俺は追いかけないと、と思ったが。
天王寺さんに駆け寄らずにはいられなかった。
……見捨てられないだろ!
ここで死んだらどこに送られるか分からないんだ!
俺は彼女の首に開いた傷口を見た。
激しく血が噴き出している。
俺は無駄かもしれないと思ったが、その傷口を押さえようとした。
俺にはそれしか思い浮かばなかったから。
そのときだった
「……君死にたもうことなかれ」
なっちゃんが、天王寺さんの手を右手で握りながら。
大阪スキルの技を発動したんだ。
すると……
天王寺さんの出血が止まった。
その青白かった顔色も、元に戻ってきている。
みるみる、首の傷が塞がっていく……!
これは……?
なっちゃんを見ると、彼女は脂汗を浮かべながら
「……他人の死を回避する技です」
教えてくれた。
そして続けて
「……ただし、蘇生対象の死の苦しみを蘇生するまで肩代わりする代償が要求されますが」
うう、と呻き声を洩らす。
キミってやつは……!
俺は彼女のその決断に震える。
友達のために、そこまで出来る彼女の心意気に。
俺はそれを見守りたかった。
だけど
「……行ってください」
なっちゃんは言ったんだ。
「……たかが万引き犯、じゃあないですもはや。犯人は、自分の邪魔になった人間なら、躊躇い無く殺すようなヤツなんです」
だから、絶対に何とかしてください。
……俺は
その言葉に頷き、走り出した。
あいつをなんとかするために。
出遅れたけど、俺たちの代わりにデパートの警備兵が挑みかかったのか。
道中に、バタバタ倒れていた。
首筋に揃って穴が開いている。
たまに、腕や頭が無い死体も見受けられた。
……どういうことなんだ?
あと
あいつが大阪スキル技を発動させるときに言っていた言葉……
AVイントロダクション。
ボディペンですマッチョ。
切り抜き脱線ゲーム。
……この言葉。
どっかで聞いたことがある。
どこだ……?
俺は走りながら考え続けた。
これはきっと、重要なことに違いないから。
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