第22話 突然の惨劇

 モザイクが荒過ぎて、全く顔も格好も分からない!

 俺はどう対応するべきなのかが分からなくなった。

 姿が見えないも同然だから。


 すると


「キャア! は、離して!」


 その次の瞬間、なっちゃんの悲鳴が。


 ……人質にするつもりか!?


 助ける方法を俺は模索する。


 モザイクを睨み据え、俺は考える。

 ……なっちゃんが今どうなってるか、モザイクのせいで分からない。


 俺はどうすればいいんだ……?

 思考する。

 だが


 その次の瞬間、再び声が響いた。


「ボディペンですマッチョ!」


 途端に、モザイクが晴れた。


 ……そこには。


 2人のなっちゃんがいた。




「私が本物です!」


「嘘を言わないで! 私が本物の菜摘です!」


 ……2人のなっちゃんは、それぞれ自分が本物だと主張する。


 ……変身能力?

 厄介な大阪スキル技だな……?


 全く見分けつかないぞ?


 服装も顔も皆一緒だし……


「あなたなら分かってくれますよね?」


「ケンタさん! お願いです騙されないで!」


 必死で懇願してくる2人。

 自分こそが本物。偽物の言動に騙されないで、と。


 ……うん。

 騙されないよ。


 でもまあ、念のために。


「大阪スキル使って」


「大阪スキル発動!」


 ……俺をケンタと呼んだ方のなっちゃんの左手に、本が出現する。

 だよね。


 それの確認をして、俺は言った。


「俺の力を使って良いよ」


「源氏物語! contentsサーディンランブラスト!」


 そしてあっさり変身を見破られたことに硬直してる万引き犯を、輝くイワシの大群が吹き飛ばす。


「うぎゃああああああ!」


 ……変身は完璧だったけど、記憶がコピーできないんだったら、俺の仲間に化けるのは下策だろ。

 それで切り抜けられると思ったんかい。


 ……アホたれめ。


「……勝負ありみたいね。ふんじばって、オーナーに突き出してやるんだから」


 言って、天王寺さんが事前に用意していたのか、縄を持って近づいていく。

 それを見て俺は


 あ、危ない! まだそいつ、気絶したとは限らないのに。

 そう思い、一言入れようとした。


 そのときだった。


 倒れていたそいつが、ガバちょと起き上がり。

 獲物を見つけた肉食獣のような動きで近づいて。


 こう言ったんだ。


 指先で、天王寺さんの首筋を丸く円を描くように撫でながら

 なっちゃんの顏で、恐ろしく邪悪な表情を浮かべつつ。


「……切り抜き脱線ゲーム」


 その瞬間だった。


 ……天王寺さんの首筋から、噴水のように血液が噴き出した。

 噴き出した血が空中で散って、あたりを朱に染める。


「キャアアアアアアア!! リカちゃーん!?」


 なっちゃんの叫び。

 天王寺さんは、自分に何が起きたのか理解できていないのか。

 目を見開き、驚愕の表情のまま、ガクリと崩れ落ち、倒れ伏した。

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