第12話 これが俺の大阪スキル

「おではたこ焼きの大阪スキル使い……つまり、分かるだろ?」


 ……大阪スキルには3つの系統があるらしい。

 観光系、偉人系、食べ物系。

 この3つだ。


 このうち、食べ物系の大阪スキル持ちは、その大阪スキルテーマになっている食べ物を扱った食べ物屋をすると、行列の切れない大繁盛店舗になるという特性があるらしい。

 だからこいつがたこ焼き屋をやりたがる気持ちは分かる。


 ……梅田さんを泡に沈めるのは断じて許せないけれど。


「だからといって、梅田さんを泡に沈めるなんて許せるかぁ!」


 俺はクソ野郎にパンチを浴びせようとするが、蒟蒻シールドがそれを阻む。


 悔しさと情けなさ。

 それが俺を焦らせる。


「どうしただ? もうそれで終わりだか?」


 クソ野郎はせせら笑う。

 焦って俺は必死で拳を繰り出すが、意味が無い。


 クソッ! クソッ!


 そんな俺に


「いい加減うっとおしいべ」


 クソ野郎はそう言い


 次の瞬間


 俺の胴体を、高熱を帯びた太い鞭の様なものが薙ぎ払った。

 吹っ飛ばされて、壁に激突する。


「逢坂さん!」


 梅田さんが駆け寄ってくる。


 ……今度は……なんだ?


 ゲヒャゲヒャゲヒャ!


 嗤うクソ野郎の肩から、左右の肩に4本ずつの紫色の触手が生えていた。

 あれは……!


灼熱の蛸の触手バーニングオクトパスだべ!」


 蒟蒻シールドだけじゃないのか……!

 そりゃそうだ。


 大阪スキルはスキルテーマが1つなだけで、能力は別に1つじゃないものな……!


 絶望的な気分。

 そんな気分になろうとしたとき。


 梅田さんが俺にこう言ったんだ。


「逢坂さん! 援護します!」


 え……?


「大阪スキル発動!」


 梅田さんの左手に本が出現し。

 梅田さんは迷うことなく本を開き。


 こう宣言した。


「みだれ髪!」


 それと同時に、俺の身体に漲る力。

 ……梅田さん!


 すると


 クソ野郎はそれが許せなかったようだ。

 こう、言ったんだ。


「梅田! お前、おでにそこまで逆らうか!? お前がそのつもりなら、お前は泡じゃ無くて達磨トルソーバーに売ってやるべ!」


 ……達磨バーだと……?


 手足の欠損した女の子に興奮する変態が、そんな悲惨な状態になっている女の子相手に淫らな遊びに興じる最悪の性風俗……!

 そんなところに梅田さんを売るだって……!?


 許せない……!


 俺は、壁に叩きつけられたダメージを無視し、梅田さんに貰った援護の効果を頼みにして、立ち上がった。

 そしてその両足に、気持ちを込める。


 ……絶対に、こいつに勝たないといけないという思い、気持ちを。


 そのときだった。


 俺の頭の中で、何かが起こった。


 そしてそれは、俺の魂を何かのチャンネルに接続した。

 そんな気がしたんだ。


 読み込まれるもの……


 ああ……わかった。


 分かったよ……!


 全てを理解した俺は。


 力の限り、こう宣言した。


「……大阪スキル発動!」


 同時に地を蹴り、クソ野郎……多古田に飛び込んでいく。

 拳を振り上げて。


 一瞬、気圧されていた多古田は、そんな俺を見て、嘲笑う表情を浮かべた。

 俺の拳を何度も阻んで来た実績故か。


「それは無駄だって分からないべ!?」


 目の前を阻む蒟蒻シールド。

 これまでと同じ対応。


 俺はそんな蒟蒻の壁に、真っ向から突っ込んで拳を繰り出し。

 こう叫んだ。


「シャークバイト!」


 同時に、蒟蒻の壁が、不可視の巨大な顎で嚙みちぎられたように消失する。


 驚愕で、多古田の目が大きく開かれた。


 ……シャークバイト。

 拳を当てた対象に、ホオジロザメの噛みつきを浴びせる技。


 俺の大阪スキルは観光系……「海遊館」!

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