第2話 ここ本当に日本か?

 俺は自分のことの確認を開始した。

 これは夢? そんな意識が働いて。


 鞄は持ってるよな。たすき掛けで持つことも可能な手提げ鞄。

 中には会社の資料と、昼飯が入ってる。


 中を確認……ん、間違いない。


 服もまあ、いつも着てる黒の背広。

 靴は革靴。ピカピカに磨いてる、愛用の靴だ。


 ……んん~?

 別に、記憶の連続性が疑われるような事柄は何もないぞ?

 俺確か、コンビニで買い物をして、横断歩道で信号待ちしてたよな?

 そのときの記憶のまんまだし。


 どうなってんの?


 ……あ、そうだ。

 スマホ。


 スマホを見たら、何か分かるかも。

 そう思い、俺はポケットからスマホを出してみたけど。


 ……ネット関係が全く使えなくなってた。

 ……え?


 ネットワーク障害が発生してるみたいな感じ。

 わけわからん。


 しょうがない……


 ……ちょっと外に出てみるか。


 向こう、なんか明るくて賑やかそうだし。


 俺はそう思ったので俺は路地裏を出ようとした。

 キョロキョロしながら顔を出す。


 ……すると、そこは……


 一応、普通だったんだけども。


 ……なんというか。

 妙な緊張感を感じた。


 上手く言えないけど。

 気を抜くのを許さない、みたいな。


 何人か人が歩いているけど……皆足早だ。

 そして、どういうわけか。皆、のぼりを立てていた。

 どっかの店舗だとか、会社だとか。

 そういうことが伺われる様な幟。

 なんだか、話し掛けることには躊躇があった。


 どうしよう……


 でも、聞かないと話にならないし。

 ここはどこですかー? って。


 ……何らかの理由で俺はここに転移してきたのかも。

 そんなことも頭の片隅で考える。

 ありえねーだろ、と思いながら。


 さらにキョロキョロ確認する。

 すると


(あ……)


 標識があった。

 そこには


「大阪城」


 そういう記述があった。

 多分、案内板。

 ……ここ、大阪なのか。


 まぁ、色々納得いかないっていうか。

 理解できないことも多々あるけどさ。


 ここにいつまでもいるわけにもいかんしな。


 ――出るか。


 勇気をもって路地裏から出る。

 そして大通りへ。


 大通りを行きかう人。


「あの、もし」


 呼び止めようとした。

 声を掛ければなんとかなる。


 そう思っていたけど。


 ……無視された。

 何で?


 普通、話くらいしてくれるだろ?


 マジで分からん。

 困惑して、立ち止まった。


 その後も、何人にも話しかけたけど。

 無視。


 ええええ?

 日本だろ?

 大阪なのに?


 ……俺さ、関西人では無いんだけど、生粋の。

 関西系の企業に就職したから、別に関西人嫌いじゃ無いんだよね。

 むしろ好きだと思うんだけど。


 それがちょっと揺らぎそうになる。

 ……本社に行くとき、大阪に行くことあったんだけど。

 そのときに会った大阪の人は、こんな不親切じゃ無かったと思うんだがなぁ……。


 そのときだった。


 いきなり、ポンポンと肩を叩かれた。

 振り返ると。


 棍棒を持った男たちが、ニヤニヤ顔で立っていて。

 そのどれもが、道徳をお母さんの胎内に置き忘れて生まれてきてしまったみたいな顔つきで。


 そいつら、俺の身体をジロジロ見て。

 こう言ったんだ。


「……肉付きは良いな。こいつはいい奴隷になりそうだ。高く売れるぜ」


 ……え?

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