地獄の大阪転生

XX

1章:地獄行き

第1話 日常の終焉

『大阪に行くだって? 個室に入るときは気をつけろよ。誘拐されて見世物小屋に売られるぞ。……大阪達磨』


 俺はエックスでそのネタを読んで、死ぬほど笑った。

 どういうところなんだよ。大阪。


 俺の名前は逢坂健太おおさかけんた。25才の会社員の男。

 職種は営業だ。まぁ、あまり優秀じゃないかもしれないけど、多分クビになるほど酷くも無い。

 彼女ナシ。社宅暮らし。社会人になって1年過ぎて2年目で、そこそこ貯金もしている。

 まぁ、多分一般的な男だ。


 今日は外回りの合間に、コンビニに寄って昼飯のサンドイッチと水を買ったんだ。

 そのときに、レジ待ちの列に並びながらそのネタを読んで、死ぬほど笑った。

 心の中で。


 本当は声を出して笑いたかったんだけど。

 コンビニの中だからね。耐えた。


 うぷぷ、って感じ。


 ダメだ、笑っちゃ……


 そう思いながら。

 とりあえず「いいね」と「リポスト」をしておいた。

 こういうネタはみんなで笑いたい。

 楽しいことは共有したいよな。


「支払いは電子マネーで」


 思い出し笑いしない様に、ポーカーフェイスを意識してレジで支払いをさせてもらって。

 俺はコンビニの外に出た。


 コンビニの外には、高校生の男女が数人いて

 なんかヤンキー座りしている。


 ……こいつら、学校どうしてんのかなぁ?

 スゲー楽しそうにしてるけどさ。

 まだ午前中だぞ?


 勉強はさ、今しかできないんだから、今頑張るべきなのに。

 ……まあ、俺がそこに気づいたの、学校を出てからだけどな。


 もっとはやく気づきたかったよ。

 学校の勉強が重要だったんだって。


 ま、彼らの人生に責任を持つ立場じゃ無いから、俺は何も言わないけど。


 俺は仕事だ仕事。

 昼飯買ったしな。


 道路を横断するために、横断歩道に向かって歩く。


 その途中、眼鏡の女子高生とすれ違った。

 両親が同伴の。

 大人の男女が付き従ってるから、多分そうだよな。


 ……ん?

 あの制服、このあたりの進学校の、兵庫市立高校ひょうごいちりつこうこうの制服だよな?

 あの緑色のブレザー。間違いない。


 ……そんな学校の子までサボリ?

 ああでも、両親同伴だし。

 なんか深い事情があるのかも。


 そう思ったので、俺はその女子高生への興味を無くした。


 で、信号待ちをしながら


 ……あ! そうだ。

 さっきのナイスネタのポストにリプ入れておこう!


 面白い返しがあるかもしれない。

 面白い人なら相互フォローしておきたいしな!


 そんなことを考えつつ、俺はポケットからスマホを取り出そうとして……


 その瞬間だった。


 ドンッ!


 という、何かを叩くような音がして。背後から。

 それと同時に。


 ……何故か、俺は路地裏に居た。

 さっきまで、横断歩道の前で信号待ちをしていたのに。


 汚ったねえ路地裏。

 典型的繁華街の隅っこ、みたいな感じの。

 吹き溜まり。ゴミ溜め。

 そんな感じの路地裏。


 ……一応。俺の目の前に大通りのへの出口みたいな光があり。

 そっちはまともそうに見える。


 しかし……


 俺は首を捻った。


 んんん?


 何これ?

 どうなってんの?

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