陰陽戦士

スレイプニイル！草を喰って元気に暮らせ

　我は王に選ばれた。

　槍が上手いだけなのだが。

　迷惑な。

　老いたら殺すと言われているも同然だ。

　ふむ。

　狼を手懐けられないだろうか。

　さすれば――

　なあ、トール。

　やってくれるか。

　はあ。

　右腕を噛まれた？

　あー。

　無理か。

　あのな。

　人ほどもある狼だったことにしておけ。

　お前の名誉は守られる。

　＋

　フェンリル！　フェンリル！　フェンリル！

　＋

　民というものはどうしようもないな。

　後世、我らは神にされるだろう。

　これは死んでからも部族を見守れという意味だ。

　飽き飽きする。

　民よ。

　戦とは言葉で行うものではない。

　修練だ。

　武器に格好いい名前を付けるのはやめろ。

　それはただの石槍だ。何だ。ゲイボルクって。

　あーあ。

　職人たちの白い目がつらい。

　はあ。

　どこかに戦争より物作りの好きな人々はいないだろうか。

　我は疲れた。

　我が名はオーディーン。

　民の要望で、こんな勇ましい名前に改名させられたのだった。

　元の名前か。

　普通だよ。

　うん。すまん。

　王の義務だ。言えん。

　あーあ。

　何と滑稽なのだろうな。戦というものは。

　なあ、トール。

　私は天国で世界を見守るのが怖い。

　民衆は何を仕出かすのだろう。

　たかが狼も倒せない、この臆病者どもは。

　＋

　太陽よ。月よ。

　世界を永遠に照らさなくて構わない。

　地球の主役は人間だ。

　つまり、世界とはこんなに安臭い。

　勘弁してくれ。

　人間たちが永遠に生きるなど。

　飽き飽きである。

　どうせ戦争をやめないのだ。人間はな。

　我がグングニルは、たかが青銅の槍なのに。

　スレイプニイルは元野生馬だ。

　これは我の快挙である。

　スレイプニイルは友達だ。

　脚は４本だ。当たり前だな。