エピローグ
「…これが当機体?である?」
「…そうだけど?なにか?」
「可愛いぽん!ゆーさん」
そう言われてゆーさんは、自身の体を見回した。
その身は、もはや以前のような鋼鉄のものではない。
マゼンダの色だけは同じだが、材質はただの布地と化していた。
デザインは機体を元としているものの、二頭身にデフォルメされており、かなり雰囲気は違っている。
そんな彼がいるのは、管理者がいる世界ではなく…[ふわっちゃー]、そこにあるふーわの家だった。
「よかったね、ゆーさん。…ぽん!」
人形と化した彼に宙返りしながらそう言って、めーてぃは思い出す。
こうしてここへと戻ってくる前のことを。
(ゆーさんが[ふわっちゃー]を守ってから、私たちはここにみんなで戻ってきた)
[シヴァ]との戦闘の後、めーてぃたちはふーわによって復調した接続者の手で、この地へと戻ってきた。
そしてその際、ゆーさんは[ふわっちゃー]を守った感謝からふーわによって頭脳にあたる部分が持ち帰られたのだ。
(ありがとう、ゆーさん。…それに助けに来てくれたふーわ、みるこ。みんなのおかげで、私はまた…)
めーてぃはあたりを見回す。
その人形の瞳に映るのは、鋼鉄の都市ではない。
…人形たちの暮らす、木と石の家や店でつくられる温かな街並みだ。
(私が好きになった場所。私が…めーてぃがいる場所)
久しぶりに帰ってきたそこは優しい空気を持ち、彼女を包み込む。
(…[ふわっちゃー]という世界)
ふと、風が吹く。
それは、めーてぃの髪を優しくなでていく。
「…ふふ。ぽん」
少し面白くもある形状の太陽を見ながら、めーてぃは少し笑う。
そして彼女は、ふーわが見る中で一言呟く。
「ただいま。…ぽん」
▽―▽
「…ふむ。今回は、理想の実現はならずか」
[MAS]の塔の外へやってきたラザースルーは、あたりを見て言う。
周囲には、離脱した[シヴァ]のブリッジ部分の残骸と、転がった[BSIA]の構成員がいる。
彼らはことごとく気絶しているが、奇跡的に死者はいないようだった。
「…」
ふと視線を向ければ、カティアが常棟を守るように抱き、気絶しているのが確認できる。
「…大半は無事。ならばよい…」
ラザースルーは海…めーてぃたちが去っていた方を見る。
どこか悔し気に、だ。
「…これからやるべきことがある。[AAA]への対応、全[幻想領域]の調査、他管理者の保護…諸々のことを」
言って、ラザースルーは仲間たちの方を向く。
「今回は失敗することとなった。[MAS]Rユニットは逃亡し、[MAS]本体はその引き抜きで破損した。…完全なる敗北だ」
だが、とラザースルーは言う。
「いつか、…そういつかだ。必ず、我々は理想を成し遂げよう」
そのためにと、彼は常棟たちを見る。
「…まずは、立て直しか」
そう言って、ラザースルーは仲間を助け起こしに行くのだった。
ふわっちゃー=DW 結芽月 @kkp37CcC
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