第35話

摩訶不思議 三十五章

一二三 一



第三十四章の続きです。



(一)

強い金縛りに襲われもがき苦しむ隆。

もがいても、もがいても身体は動かず、声も出せない。

しかし眼は見える。耳も聞こえる。これだけ強い金縛りに遭ったことは今まで

無かった。

隆はもがきながらもある事を決意する。

それは「この金縛りの正体を見てやろう」という事だった。

幸い眼は見える。

隆は霊的なものの存在を感じている窓の方へ眼をむけた。

そこに隆が見たものは・・・

 隆の部屋の窓は床から1メートル50センチほどの高さにある。

その窓の外から室内を覗いている顔がある。

先にお話ししたようにこの窓から普通の人の侵入は不可能である。

隆が見ている顔は、顔だけが浮かんでいるのであった。

その顔は隆の方をじっと見ている。

時折揺れるように動いている。

身体が動かせず、声も出せない隆は眼だけで

その顔を追っている。

隆はこの顔が窓から入ってこようとしているのではと感じている。

金縛りに遭っているが頭は起きているので、

隆は懸命にその顔に向かって念を送る。

 「お前なんか知らない。こっちに来るな。」必死で念じている。

するとその顔が一瞬笑った様に思えたそうです。そして次の瞬間にその顔に変化が起きたそうです。

 なんと隆の知人の顔に変わったのです。

それを見た隆はこう念じました。

「〇〇の顔に変わっても無駄だ。〇〇がここにいるはずもない。」

これは手強い。自分一人でなんとかできるんだろうかと・・・出た答えは母親の力を借りることでした。

それからは上階で眠っている母親に念を送り続けたそうです。

「お袋、助けてくれ」と。

すると窓の外に浮かんでいる顔がまた変化したそうです。

今度は母親の顔になって窓の外から中を見ています。

「母親の顔になっても無駄だ。そんな所に母親はいない。」

その顔に向かって念を送りました。

顔はまた最初の顔に戻り、そして部屋に入ってくる感じがします。

相変わらず金縛りは続いています。

顔が室内に入ってきた感じがヒシヒシと伝わってきます。

足元の方に気配を感じます。

その気配がゆっくりと近づいてきます。

意を決した隆は、相手の正体を見極めようと足元の気配のする方へ目戦を向けます。


(二)

 その時に信じられない事が起こります。

なんと着ていた薄手の夏蒲団が頭の上まで競り上がってきたのです。

その時かすかに笑い声が聞こえたそうです。

次の瞬間身体が浮くような感覚があったそうです。以前にも足を持ち上げられたことが有った隆ですが、この時は身体全体が浮いているような感じだったそうです。

 よく言われる空中浮遊とでも言うのでしょうか・・・

自分の身体から魂が抜けていくっ感じだったそうで、自分の布団の上で横たわっている自分の身体が見えたそうです。

その横たわっている身体を見た時に隆は

「死んだのかな」と思ったそうです。

その時です。部屋が一瞬パッと明るくなったのを感じたそうです。

隆の金縛りが解けて、全身に汗をびっしりとかいていたそうです。

「あれっ?電気は点いてないな。」

「さっき一瞬光ったのは何だったのかな・」

隆は再度「光」に助けられました。

ザワザワ感も消えて無くなっていましたが、なかなか寝付けずに眠れない夜を過ごしたそうです。

翌日、昨夜の事に関して隆なりに調べてみると、ある書物に「幽体離脱」という事柄を見つけました。

ほぼ隆の経験した浮遊感のような事が記されていました。

それが正しいかどうか、科学的に云々等どうでも良くて、とにかく恐ろしい体験をした。

 その書物によると「幽体離脱」をして霊魂がどこかへ行っている時(隆の場合は空中で自分の身体を見ていた)身体と霊魂は魂の緒で繋がっていてそれが切れると死ぬと。

諸説あるとは思いますが、この時の隆は「なるほど」と納得したそうです。

このような現象を臨死体験と呼ぶ説もあるようです。



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