第34話
摩訶不思議 三十四章
一二三 一
十三、十四章でお話しした大阪府下
南部の都市に隆が住んでいた頃の
話です。
(一)
社会人になって四年が経過したある夏の夜のことだったそうです。
当時隆の部屋は四階建てのビルの三階にありました。
元々はビジネスホテルだったそうで、部屋数は沢山ありました。
真夏の暑い夜の事です。
テレビのプロ野球中継が終わり、ラジオでご贔屓チームの試合を自室で聞いています。
仕事の疲れもあってかラジオ中継を聴きながらウトウトし始める隆でした。
少し眠ってしまったようで、時間は午後十時前。ラジオのナイター中継もすでに終わっています。
暑くて喉が渇き飲み物を飲みに四階のキッチンへ上がりました。
居間では母親がテレビを観ています。
「おやすみ」
と母親に声を掛け三階の自室に戻る隆。
その時です。背筋にゾクッとするものを感じたそうです。
咄嗟に振り返ってみましたがそこには何も有りません。
一瞬そう感じただけだったので隆は
「気のせいかな」
と思って自室に戻ります。
自室に戻りテレビを観ている隆。
スポーツニュースでご贔屓チームが勝利したことを知り笑顔になります。
この時には先程感じたゾクっとする感じも何時ものザワザワ感も無かったそうです。
時計の針は午後十一時を回っています。
隆の部屋にクーラーやエアコンは付いていません。窓を網戸にして開けっ放しています。
四階建ての三階部分で外壁に非常階段も雨樋も無いので泥坊が入る事もありません。
隆は扇風機のタイマーを掛けて布団に横になりました。
(二)
どれくらい眠っていたのか、不意にザワザワ感が強く襲ってきて、隆は目を覚ましたそうです。
目が覚めてすぐに
「あっ、ヤバイ!」
と隆は思ったそうです。
というのも、隆が金縛りになる時に必ず前兆があるそうで、それはまず頭のてっぺんからつま先にかけて電流が走るようなビリビリ感があり、その後胸のあたりを左から右に同じように電流が走る感じがあるそうです。
丁度十字架の形になるように・・・
この時もそのビリビリが縦横にはしったそうです。
そしてその直後に金縛りになったそうです。
「金縛り」とは文献により諸説有りますが概ね、寝ている最中に急に体が動かなくなって、声が出せなかったり、ときには誰かの話し声が聞こえてきたりすることで、原因は医学的に解明されつつ有ります。
医学的にも諸説あるようですが、隆の考えは違うようです。
「医学、科学で解明出来ない事はこの世に沢山ある。現に自分が経験して来た事の数々はどう説明する?いろいろな説でこじつけるだろうけどそんなことで納得は出来ない。納得できるはずがない。」と隆は考えています。
金縛りに襲われる時に隆はいつも霊の気配を感じるそうです。
この夜の金縛りは電流(隆はそう呼んでいます)の走り方がいつもより強く、
隆を不安な気持ちにさせました。
そして身体が動かなくなり、声も出せずもがき苦しむことになります。
この夜も隆はもがき苦しみながら霊的な存在を感じています。
その感覚は異常に強く恐怖心を抱くくらいだったと述懐しています。
身体が動かず、声も出せない。でも目は見えます。隆は懸命に身体を動かそうともがいています。
金縛りの経験がある方には分かって頂けると思いますが、声が出る、身体のどこか少しでもが動けば金縛りは解ける事が多く、隆の場合もこの例にもれず解けます。
必死になって身体を動かそう、声を出そうとする隆ですが一向にどうにもなりません。
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