第31話

摩訶不思議 三十一章

一二三 一



今回も前章でお話しした当時隆が

居住していた新興住宅地へ繋がる

道路でのエピソードですが、今回

はちょっとコーヒーブレイクとし

てお笑いネタをお届けします。


(一)

前章でお話ししたようにこの道路、地元の方達は「七曲がり」と呼んでいます。

文字通り大小のカーブが多い対面通行の山間を走る道路です。

この道路沿いに霊園があり、その入り口の橋のたもとに女性の霊が出没することは前章でもお話ししました。

 今回はその霊園の女性幽霊に纏わる爆笑ショートストーリーです。

とある夏の夜の事。

午後10時を少し過ぎた頃自宅へ家人を乗せ車を走らせる隆。

国道から七曲りへと車は進んで行く。

霊園の前に女性の霊が現れる時には、国道から七曲りへ入ったこの辺りで隆特有のザワザワ感が起きて来る。

この夜は何も感じない。

「今日は霊園では何もないな」

隆の気持ちが少し楽になった。

「あとは人形達に引き込まれない様に注意して運転するだけだ。」

と自分に言い聞かせた。

隆の車の前方に一台車が走っている。

後方からの車は来ていない。

まもなく問題の霊園なのだがザワザワ感は起きていない。

「今日は幽霊居ないと思う。ザワザワしないから。」

と同乗している家人に話したそうです。

それを受けて家人は

「気持ち悪い事言わんといて。」

隆の能力は知っているもののこういった反応になることは頷ける。

前方に霊園が見えてきた。

その時である。前を走る車が急ブレーキをかけて停車した。

丁度霊園の前だった。

隆も急ブレーキをかけて追突は回避した。

何事かと思ったがすぐにその理由が分かって隆は爆笑する。

同乗していた家人は前の車のドライバーと同じ反応をしてるようだ。

家人が霊園を指さしながら

「あそこ。白い服着た人が立ってる。」

「あれが貴方がよく言っている白い服の幽霊やね。今日はいないんと違うかったの!」と叫んだ。

前の車のドライバーもこの光景を見て驚いて急ブレーキをかけたようで、運転席から霊園の方を凝視している。

隆は可笑しくてたまらなかった。

隆は爆笑しながら

「良かったわ。後ろから車来てなくて。」

「こんなことでオカマほられて鞭打ちにでもなったらあほらしくてやってられへん。」

「あのね、よく見てみ。」

「確かに白い服やし、橋の袂でいつも女の人が立っている所と同じやねんけどな。」

「虫取り網持って樹のちょっと上見てる。」

「あれは霊園入り口にあるクヌギの樹にいるカブトムシやクワガタを摂りに来てる人や。」

「あの場所で白い服を着た幽霊が出るっていう話が知れ渡っているから前の車の人も幽霊やと思ってびっくりしたんやろ。」

急停車した前の車がようやく動き始めた。

隆は笑いが止まらない。

家人は虫取りの人に怯えたことに憮然とした表情で乗っている。

それを見て隆はまた笑った。

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