第30話

摩訶不思議 三十章

一二三 一



今回も前章でお話しした当時隆が

居住していた新興住宅地へ繋がる

道路でのエピソードです。


(一)

この道路、地元の方達は「七曲がり」と呼んでいます。

文字通り大小のカーブが多い対面通行の山間を走る道路です。

この道路沿いに霊園があり、その入り口の橋のたもとに女性の霊が出没することは前章でお話ししました。

 既出のX先生の仕事で帰路に就くのが遅くなったある日の事、X先生とその支持者の方が隆を車で自宅まで送ってくださることになったそうです。

車中にはX先生、支持者の方、隆、そしてK

さんが乗っています。

隆を送った後Kさんも送って行かれるとの事で、恐縮している二人でした。

例によって今後のスケジュール確認や色々な話を車中でしています。

車が七曲がりに差し掛かった時、X先生が

 「隆さん、この道はよく事故が起きるでしょ?」と尋ねます。

「はい。カーブが多く、道が狭いせいなのかよく事故が起きます。」

隆は応えます。

X先生が少し微笑みながら

「それだけでは有りませんよ。」

それを聞いたKさんの顔が少し強張る。

「途中に霊園がありまして、そこの入り口によく女性が立っています。」

隆が話した時に前方に霊園が見えてきた。

「女性だけではないですね。いろいろいらっしゃいますね。でもそれも違います。」

「霊園の前の方達は大した事では有りませんよ。問題はこの道路沿いに並んでいるものですよ。」

「道路沿いですか?」と隆。

「流石にこれは見えていないのですね。」

「この道路、何でも無い所でよく事故していませんか?例えば前の岩肌の所とか・・・」

X先生が前方に見えるカーブの岩肌を指さしながら言葉を継いだ。

「隆さん、この近くで人形供養をされているお寺さんは有りませんか?」

「さあ・・・私はそんな話は聞いたことはありませんが。」と隆。

Kさんの顔はより強張っている。

隆がこの団地に引っ越してきて二十年少し経つのだが、隆はそんな話は聞いたことがなかった。


(二)

X先生が指さした岩肌、実はこの場所がこの道路でよく事故を起こす場所だそうで、隆はこの岩肌にぶつかっている車を幾度となく目撃している。

問題の岩肌が目前に迫った。

X先生が何やら呟いておられる。

一行を乗せた車は何事も無く通過する。

直線の道路に出た時にX先生が話す。

「あの曲がりくねった道の両側にずらーっと人形が並んでいます。目を光らせながら、首をクルクルと回して立っています。」

「曲がっている道をドライバーさんに真っ直ぐのように見せるんです。」

Kさんの表情が硬い。

X先生の言葉を受けて隆が

「それであの場所で車がよく乗りあげたり、ぶつかったりするんですね。」

 「道としてはカーブこそ多いですが大して難しい道では無いのにおかっしいなあと思っていました。」 

「それで千瀬瑛が先程人形供養をしているお寺が無いかとおっしゃったんですね。」

そんな話をしているうちに隆の自宅前に車は着いた。

先生一行を見送った隆は家に入るなり家人に尋ねたそうだ。

「俺は聞いたことないけど、このあたりに人形供養しているお寺はあるの?」

「ああ、年1回か二回七曲から団地に入る道の角に看板が出る時があるわ。前に一度見かけたことがあるよ。」

「俺、見た事ないな・・・」

「そんなんほとんどの人が知らへんと思うけどね。どうかした?」

「七曲沿いに人形が並んでいて曲がっている道を真っ直ぐに見せるって「」

「X先生が人形供養しているお寺が近くにありませんかって。」

「怖いねぇ。そんな話聞いたらあの道運転できなくなるやん。」

「まぁ、そんなものに負けない様に気持ちをしっかり持って運転したら大丈夫って言ってはったけどな。」

「K山さんと一緒に見た霊園の所の女の人もいるけど、他にもいるって。」

「そうなんや・・・」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る