第21話

摩訶不思議 二十一章

一二三 一



二十章、H温泉での講演会、食事会の

続きのお話です。


(一)

初老の女性の姿が笑顔と共に消え、隆のザワザワ感も消えました。

X先生が隆に近づいてこられ一言。

「来られてましたね」

「はい。喜んでおられました。」と隆。

「以前私の所に通って来られていた頃のお姿そのままでした。楽しそうで良かったです。」と言われ、また支援者の方へ戻られました。

 Kさんがやって来てました。

「先生何かあったん?」

「いや。何もないよ」と隆。

「怪しいな・・・二人でコソコソ話してたから、何かあったと思ったんやけどな。」

楽しんでますか?って聞かれただけと隆は嘘をつきました。

宴が終わりを告げます。

一旦部屋に戻り、有名な温泉に浸かりに向かう二人でした。

食事も美味しいし、温泉も最高で二人は気分よく部屋に戻ってきました。

隆がテレビをつけてぼんやりとしていると、またザワザワ感が湧いてきました。

今回も嫌な感じはまったく有りません。

あの女性がお礼に来たのかなと隆は感じたそうです。


(二)

その時です。ドアをノックする音が聞こえました。隆はやはり来られたと思い、聞こえないふりをしたそうです。

するとまたノックの音がします。

その音でKさんが

「誰か来たんとちゃうん?」と言いました。

行った所で誰も居ないと隆は思っていたので

「そう?出てみたら。」と返したそうです。

「めんどくさいなぁ。誰や?」と呟きながらKさんがドアに向かいます。

「はい」と言ってドアを開けるKさん。

誰も居ないはずやけどなと隆は笑いをかみ殺していたそうです。

「いたずらや。誰もおらへん。ピンポンダッシュみたいなもんやな。」とKさん。

「そうやろな。けどいたずらとは違うと思うで。」と隆。

「何の話や?」とKさんの顔から血の気が引いて青白い顔になった。

「あのな。ドアは二回ノックされたやろ?」

「エッ。一回ちゃうん?俺には一回しか聞えなかったで。二回もノックされてるんやったら、なんで隆さん出なかったん?」とKさんは引きつった顔で言います。

隆が笑いながら「そんなもん出たところで誰もおらへんのん分かってたもんな」

「何なに・・・どういう事?」とKさん。

「そもそもな、宴会場に陰膳あったやろ。

あの時に何も気づかなかったやろ?」

「先生と二人でコソコソ話してた時か?やっぱり何かあったんやな。」とKさん。

「うん。陰膳の主が来てはったんよ。」

「あんたの隣の席やろ。見えたんや。それで先生と話してたんや。」

「昼間の猫覚えてるやろ。あの猫もそうやってんけど、今度は初老の女性の姿で来てはった。ずっとにこにこしてたわ。」

「例のザワザワ感もしてたけど嫌な感じが全然せんかったからKさんには伝えなかった。」

「ふーん。それで?」

「温泉から戻ってテレビ観てたらまたザワザワしてきて、それも嫌な感じが無かったから言わなかってんけど、一回目のノックの音した時にKさん見たら気付いてなかったし、普通に人がノックした音に聞こえなかった。これは俺にしか聞えてない。ドア開けたら誰もいないなと思った。それでそのままにしてたら二回目のノックがあって、それはKさんが反応したやつやねんけど、その時もザワザワ感あったから誰もおらへんなと思ってた。案の定誰もおらんかったやろ。」

「そんなんやったら言うてくれや。」とKさんが拗ねたように話す。

「言うたら怖がるやろ?お礼に来られただけやから大丈夫やと思ってたしね。」

「嫌な感じしてたら止めてたよ。」

「お礼って?」

「先生とも話したんやけど、お墓参りして先生お経唱えてはったやろ。それと陰膳である意味招待してもらったからね。会場にいる間もずっとニコニコしてて、その姿は先生の所に通っていた頃そのままやったって。」

「そのお礼に来たってこと?そんなんいらんのに・・・」

「それで俺がドアの方へ行くとき微妙に笑ってたんやな。悪いオッサンやな。」

「そんな事教えたら怖がるやろ。」

「俺はあんたらと違うから、怖がるな。」

「そやろ。」

「なあ。今もこの部屋にいてるんか?」とKさんが小声で話した。

「おらんよ。何にも感じんから。」

「優しそうな人やったけどな。」

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