第17話

摩訶不思議 十七

一二三 一



前章に引き続き「真っ白なお婆さん」についてのエピソードです。



(一)

隆が40歳の頃ある女性と知り合う。

この女性にはお子さんが五人いて、全員女性であった。

ご本人も若干霊感のようなものが有るとの事でしたが、五人のお子さんのなかの長女がひときわ強い力を持っているとの事でした。

 隆は五人のお子さん全員と会っているのですが、長女とはなかなか会う事ができませんでした。その理由は後で分かるのですが、長女の方が隆を避けていたそうです。

ある日その長女さんと会う事になり、約束の場所へ向かいました。

食事を一緒に摂ろうという事になり、和やかな雰囲気で食事を楽しみました。

デザートタイムになって打ち解けた雰囲気になり、長女が自ら話し始めました。

 長女は物心ついた頃から「見える」「聞こえる」人であったと。小さい頃は誰にも相手にされなかったのでそのことは口に出さないようにしていた。

中学頃になって母親が転居をし、その家で暮らすようになって霊を感じる力が強くなったと。自分についている霊(守護霊)が先祖の霊なのだが、あまり強い(こういった表現で良いのか分からないが)霊では無くて、強い守護霊を持った人に会う事が少し苦手で、隆となかなか会えなかったのも、そうした部分が邪魔をしていたと言います。


(二)

その長女が隆を見ていますが、なかなかまっすぐ見ようとしません。

「ごめんなさい。私はちゃんと見てお話しがしたいんです。でも今私についている霊が隆さんが眩しくて、まっすぐ見ていられなくて、そばにも寄りにくいんです。」

「僕の何が眩しいの?」

「貴方の横にいる、真っ白なお婆さんが眩しくて、私についている霊が嫌がっているんです。そばに近寄ろうとしても、じろっと睨まれて怖くて近寄れないんです。」

「私は今、そのお婆さんと話してみました。そのお婆さんは、貴方を邪悪な者から守っているのだと。これまでにも何度か貴方を助けていると聞かされました。今、近くに寄っても良いと言われたので怖がらずに近寄れるようになりました。」とそばにやってきたそうです。この時はその真っ白なお婆さんが誰なのか分かりませんでした。

「そのお婆さんって僕のご先祖様?」と隆は問いかけましたが長女は答えずに、隆の右を見て言いました。

「はっきりとは断言できません。でも物凄く強い霊であることには間違いありません。とてつもなく強い・・・そして眩しいんです。

これほど強いと、弱いものは近寄りがたくてそばに寄っていけません。」と話したと言う。


(三)

ホテルの隆の部屋。その話を聞き終えたKさんは「それやったら前から分かってたんとちゃうのんか?」とまだX先生の力を直に見た性か少し興奮気味に話しました。

「うん。俺の母親が言ってた事とか、今までに起きた不思議な事や、危ない時に助けられた事なんか考えると、全部女性に助けられていると思える。車で居眠り運転してガードレールに突っ込みかけた時に起こされた声も女の人の声やったしな。」

「隆さん、あんたすごいな。天照大御神様やろ?凄すぎるわ。そりゃあ眩しいわな。

天岩戸に隠れはった時、世界は暗闇になったんやろ。太陽そのものやん。そりゃ眩しいわな。」と神話を持ち出して話しました。

隆もうすうす分かってはいたものの、はっきりと言われてすっきりしました。

 隆が照れたように笑っていると部屋のチャイムが鳴りました。

時計を見ると午後十時を過ぎています。こんな時間に誰かなと思いながら応対する隆。


(四)

 ドアの向こうにX先生の支持者の中でも社会的地位の高い方が立っています。

「隆さん、Kさんもいらっしゃったとは丁度良かった。X先生は休まれたのですが、これからバーで一杯やりませんか?」と。

バーに入ると先程X先生を囲んで食事をした有力支持者の皆さんが待っておられた。

「隆さん、Kさん。X先生をよろしくお願いいたします。このプロジェクトの成功を祈念して乾杯をしたいと思います。カンパーイ。」の掛け声で二次会が始まった。

そこでの話もやはりX先生より出た天照大御神様についての話に終始することになった。

「X先生は隆さんが何度か助けられていると言われましたが、今までにどんなことで助けられましたか?」それに対する隆の体験談を聞いて支持者さん達は感心したり、納得したりされ、普段X先生から聞かされている天照大御神様像と照らし合わせて、「間違いないね。すごいね、隆さんは。」

こうして東京の夜は更けていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る