第16話

摩訶不思議 十六

一二三 一



隆が会社員として最も輝いていた頃に仕事を通じてある霊能力の高い方と知り合いになり、その方と隆の仕事上の相棒的な人物と三人で日本全国を旅することになります。

この方と出会ったことによって隆を助けた「眩い光」や「真っ白な老婆」について、隆は理解することになります。


(一)

隆が40歳を過ぎた頃、マスコミ関連の仕事についていた隆はある霊能力の高い方と仕事を通じて知り合う事となります。

隆は色々な資料やその方の著書等によってその方の霊能力の高さを自身の経験等からも信じていました。

会社は違いますが、普段から良く一緒に仕事をしていた隆の相棒とも呼べる人物Kさん。このKさんは霊の存在自体半信半疑でいましたが、隆と知り合って隆のいろいろな体験を聞かされているうちに、「不思議な事があるもんやな」と思うようになっていました。

そんなある日、隆の取引先からある方を紹介したいと連絡が入り、Kさんを伴って待ち合わせ場所へ向かったそうです。

そこで初めて霊能者Xさんと顔を合わせる事になりました。

このXさんの支持者の方々の力添えがあり、隆とKさんはそれまで経験した事の無いような仕事を多く、精力的にこなすことになるそうです。隆は当時の事を懐かしそうに、そして楽しそうに話します。いろんな所に出かけて、クタクタになった事も有ったけど、そのすべてが素晴らしい思い出になっていると話します。Kさんも同じ思いだそうです。

隆とKさんがXさんの活動拠点である東京へ出向き、Xさん、その支持者の方を交えて仕事の最終打ち合わせに入った時の事です。


(二)

隆の不思議体験を折に触れて聞いていたKさん。勿論前章で述べた「お伊勢参り」の件も聞いていました。

隆は今回の東京での最終打ち合わせに秘めた思いが有りました。Kさんとは仕事の上では隠し事をせず、腹を割った付き合いをしてきていましたが、この日だけはKさんにも内緒にしていたことがありました。

 それはXさんが本物かどうか、Xさんの霊能力の高さを試してみようと思っていたそうです。仕事の打ち合わせが一通り終わり、会食をする時間になりました。今後の抱負などを語り合いながら場の空気は盛り上がっています。この頃には隆はXさんの事を「先生」と呼ぶようにしていました。

「先生、変なことをお聞きしたいのですが」と隆が切り出しました。

Kさんは「何を言い出すんや」と言いたげな顔で隆を見ました。その場にいた隆とX先生以外全員の注意が集まります。

「どうぞ。何でも聞いて下さい。」とX先生が答えました。その言葉を受けて隆は続けます「お伊勢さん、天照大御神様が人間に姿を御見せになる時はどのような形でしょうか?」この頃の隆は母親から聞かされたことと、夢の内容からして、自分を何度も助けてくれているのがお伊勢さん、即ち天照大御神様だと考えていた。このことはこの席のなかではKさんしか知らない事で、Kさんはたちどころに隆の意図に気付いた様子だった。

 先生はその質問を受けて、「眩いばかりの光です。」と即答しました。

隆の表情は変わりませんでしたが、Kさんは一瞬目を見開きました。隆は質問を続けたそうです。「ありがとうございます。もし、光ではなく、人間の姿、形で見せるとすればどのようなお姿でしょうか?」その質問に対して先生は隆をじっと見つめます。


(三)

 「頭のてっぺんからつま先まで真っ白なお婆さんです。」一瞬間を置いてこう続けたそうです。「珍しいですね。滅多にない事です。隆さん、何度か天照様にお助け頂いていますね。隆さんは天照大御神様に守られていますね。」と。隆は驚いたと言うか納得したそうです。「ああ、この方は本物だ。」と。隆以上に驚いたのはKさんでした。自分が聞かされていた隆の不思議体験に出て来る「眩しい光」「真っ白なお婆さん」「女性の声」すべてが一本に繋がります。その場にいたX先生の支持者の方達も一様に驚きは隠せなかった様子で、「へえ~。そんな事があるんですか!」と目を丸くしています。

X先生は微笑みながら、「隆さんとする仕事は間違いなく成功します」と言われたそうです。

ホテルの自室に戻った隆の元へKさんが訪ねて来ました。「何を言い出すんかハラハラしたわ。先に教えてくれるか」と。

そして「本物やな。あの人。あんたのあの話に全部ぴったりやったな。しかも何度か助けられてますねって・・・」

「うん。あの人は本物やわ。凄い。」

そして隆は有る事を話し始めます。

それは十年来の付き合いのKさんにも話したことのなかった「真っ白なお婆さん」に纏わるエピソードでした。

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