第14話

摩訶不思議 十四

一二三 一


今回は十三章の続きをお読みください。


(一)

 新たに沸き起こったザワザワ感。

亡くなったRさんの霊が現れた時とはまったく違う嫌な感じがある。

隆は自分の中で膨れていく嫌な感じを打ち消そうとテレビのバラエティ番組を観る事にした。テレビに目はやっているもののまったく内容が頭に入って来ない。それもそのはずで隆の嫌なザワザワ感は一層強くなってきていた。寒くも無いのに何故か身震いする隆。

ぼんやりテレビを観て一時間が過ぎる。

夜も更けてきたので自室に戻り寝る事にした隆だったけれど、ザワザワ感が収まらない。何とか眠ろうとする隆。天井付近からだろうかピシッ、パシッとラップ音がし始める。 これはマズイことになってきたなと隆は心の中で呟いた。

 こんな時は数珠だ。そう思い数珠を取りに行とした時に、金縛りに遭った。

あっと思った瞬間に身動きが取れなくなり、声も出せない。

皆さんの中にも金縛りを経験した方がいらっしゃると思いますが、不思議と目だけは見えるし動きます。耳も聞こえます。隆のザワザワ感が強くなっています。

それと共にラップ音が多くなっていて、ミシミシといった音までしている。

誰かが(厳密に言うと何かが)窓から部屋に入ってくる気配が感じられたそうです。

 隆は懸命に金縛りを解こうとしますが解けません。足元の気配のする方へ目だけを向けてみると、そこにはRさんが立っています。ですが夕方に現れたRさんの霊体とは波長というか、感じが違ったそうです。

「お前は誰や?」頭の中で隆が問いかけると

そのRさんのようなものが「おじさんや。お前をいい所へ連れて行ってやる。」と語りかけてきます。隆のザワザワ感がピークを迎えます。その時そのものに両足首を持ち上げられる感覚があったそうです。隆は必死で抵抗を試みますが身体は一向に動きません。隆はそのものに対して頭の中で話しかけたそうです。

 「Rおじさんのはずがない。おじさんならこんなことは絶対にしない。お前なんか知らない。ここから出ていけ!」と。何度も何度も心の中で叫んだそうです。

その努力の甲斐なくいよいよ足を持ち上げられ始めました。

「これで終わりか・・・。こんな死に方嫌やな。」と思ったが身体がいう事を効きません。隆は覚悟を決め、見開いていた目を閉じて身体の力を抜きました。

その時です・・・


(二)

また別のエピソードでご紹介することになるのですが、まばゆい光が窓から隆の顔の方へ向かって射してきました。一瞬夜が明けたのかと思うほどの明るい光だったそうです。光が射したと同時に隆の金縛りは解けて、ザワザワ感も無くなり、訳の分からないものの気配も消えました。

隆がこの眩いばかりの光にはっきりと助けられたのは、これで二度目となります。

眩い光のおかげで危ない所を救われた隆。

まさに「九死に一生を得る」という言葉が当てはまると思います。

隆はびっしりかいた汗をタオルで拭きながら眩い光に助けられた事と現れた得体の知れないものについて考え始めました。

眩い光に関しては、以前も隆の危ない時に現れ、隆を救ってくれたそうです。

問題は得体のしれないものの方です。隆の中で二つの選択肢が有りました。

一つ目は「地縛霊(じばくれい)」諸説あるとは思いますが概ね自分が死んだ事を受け入れられなかったり、理解できずに死亡した場所や建物から離れられずにいる霊の事とされています。これだとすると、何度でも先程のようなことが繰り返される恐れがあります。

二つ目は「浮遊霊(ふゆうれい)」 こちらも諸説あるようですが概ね自分が死んだ事を受け入れられなかったり、理解できずに現世をさまよっている霊の事とされています。これだとすると、通りすがりに出くわしたことになるので、繰り返しやってくる心配は少なくなると隆は考えていました。翌日の夜、帰宅した母親に昨日の事を話すと、「また、光に助けられたんやね。感謝せんと罰当たるで。

きっと浮遊霊やわ。今居らへんから。」と笑いながら答えました。その母親の笑いながら話す姿を見て隆は「他人事やな」と思いちょっとむっとしました。その表情を見て取った母親が「あんたは大丈夫。その程度のもんに負けへんよ。あんたは何方に守ってもらっていると思ってるんや」と諭すような口調で話しました。

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