第9話

摩訶不思議 九

一二三 一


前章で車に纏わるエピソードをお話しましたので、引き続き車に関しての隆のエピソードをお伝えします。

隆の車に関してのエピソードは沢山あるそうです。前述のN君の事故もバイクですが車関連といえるでしょう。

例えばある交差点に差し掛かった時にゾクッとする時があって、その交差点では大きな事故が有って数名の方が命をおとしている場所であったり、同じようにゾクッとする感じがあり、前方に飛び出し坊やの看板が有る。よく見てみると飛び出し坊やの看板の頭の上に子供の顔が浮かんでいた事もあると。

ここではもっとはっきりとした体験について話を進めていこうと思います。

 車を運転しているシーンでの隆は、大学生もしくは既に社会人となっています。


(一)

 京都方面にある女性とドライブした帰り道のことです。その女性は今まで心霊現象や霊を見たことは無く、隆の話にも半信半疑でした。そして「私ね、霊を見れるものなら見てみたいの。」と隆に告げました。隆は恐ろしい事を言う女性だなと思いましたが、その時点で車は夕暮れ前の山道を走っており、ハンドルを持つ隆は例のザワザワ感を感じていました。「そう。見たいの?」と隆。

「見たいです。」と女性が答えました。

 「そんなに見たいのならもうすぐ見れると思うよ。但し後々困ることになるかもしれないけど。それでも見たい?」それに対しても「見たいです。」と女性は答えたそうです。

そんな会話をしているうちに隆のザワザワ感はより強くなっていた。大きなカーブを二つ通過し左前方に山肌が見えてくる。隆のザワザワ感が一層強くなった。隆の目には山肌に黒っぽく鎧武者が見えている。

そこを通り過ぎ10分ほど走ってから女性に「何か見えた?」と尋ねた。

 女性は「あの後左の崖の下に人みたいな黒っぽいのが見えたけど、あれがそうやったんかな?」と思い出しながら話した。

「見えてるやん。あれは鎧武者やったわ。」と隆が話した。その後車内には微妙な空気が流れていたそうである。

その女性はその時から頻繁に霊をみるようになり、見たいと言ったことを後悔することになったそうだ。


(二)

ある日隆がよく走る道を自宅へ向けて車を走らせていた時の事、変な胸騒ぎがした。

何かなと思いながら車を走らせていると、頭の中に紺色の服を着た男の人が自転車で隆の車の前を右から左に急に横切る映像が浮かんだ。前方にまさにその男の人が自転車に乗って右側を走る姿が見えた。

隆は「これか」と思ってアクセルから足を離しブレーキを踏む用意をした。と当時を振り返っていました。

案の定件の男の人が乗った自転車が、後ろを振り返りもせず右から左に隆の車の前を横切りました。事前に察知していた隆は余裕でブレーキを踏み、衝突をかわしたそうです。

同乗者が「あんな急に横切ったのに、よく避けれたね。」と隆に言います。「分かってたからね」と隆。「えっ?分かってたの?あの人が横切るのが?」「うん。直前に頭の中に映像が流れたから」と隆。それを聞いた同乗者は「・・・」だったという。

 その翌日、昨日と同じ道を走っていると又もや胸騒ぎがする。あれっ?昨日と同じ感じがするなと隆は思ったそうです。

すると今日は花柄のスカートで帽子を被った女性が車の前に飛び出してくる姿が脳裏を過ぎりました。景色からすると大きな角で三本ほど前方に見えているところの様です。今日は同乗者に対して、「あそこの角から花柄スカートで帽子を被った女性が飛び出してくるから、ブレーキをかけるね。」と予告してブレーキペダルを踏みスピードを落としながら、女性が飛び出すであろう角に近づいた時、予告通りの服装の女性が角から飛び出してきたそうです。勿論事前に察知していたので事故は起きません。昨日と同じ同乗者は「なんで分かるの?気持ち悪い。」と言ったそうです。こうして隆は二日連続で交通事故を回避することができたそうです。


(三)

 交通事故の回避といえば、こんな事も有ったそうです。

日本海方面から大阪方面へ車を走らせていた時の事、隆は眠くて眠くて仕方なくなっていました。しかし暗くなる前に峠を抜けたいという思いがあって眠気を堪えて運転を続けています。同乗者は眠っています。

すぐ後ろにシルバーのベンツSクラスが続いていたそうです。隆はとうとう居眠り運転をし始めます。後ろのベンツから見れば隆の車は右に左にウロウロしながら進んでいて、居眠り運転の兆候がはっきり出ていたと思われます。隆の記憶では居眠り前までぴったりと後ろに付いていたのに大分離れていたとのことです。どれくらいウトウトしたのかは分かりませんが一瞬眠っていたことは確かだったと隆は言います。隆の車が大きく左に逸れてガードレールに突っ込みそうになったその時隆の耳に「あぶない!」と女性の声が響き渡ります。ハッと我に返った隆の目前にガードレールが迫っています。大慌てで右にハンドルを切る隆。その時にバックミラーに映るベンツSクラスは30メートルくらい離れていたそうです。同乗者は眠ったままです。

さっきの女性の声は・・・いったい誰の声だったんだろう?母親の声とも違うものだったそうです。

 九死に一生を得て自宅に帰りついた隆は、居眠り運転の事、女性の声の事を同乗者に話しました。「私でない事だけは確かね」と同乗者。「そう。お前は寝ていた。」隆の心の声が聞こえます。この女性の声、この女性に関してある程度の想像はついていたのですが、隆は後になってある方との出会いで確信することになります。

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