第5話

摩訶不思議 五

一二三 一


(一)


隆の三か月に及ぶ入院生活も終わりに近づいたある日、母親が疎遠になっていた親戚のおばさんを伴って病室に現れた。

「隆ちゃん、具合はどうや?寂しいやろ?大丈夫か?」矢継ぎ早におばさんが言葉を発してきた。隆はキョトンとしている。

母親も戸惑いがちにその光景を見ていた。

おばさんの一通りの見舞が終わり最寄りの駅まで見送りに行った母親が戻り、おかしなことを話し始めた。

 「おばちゃん、なんで来たと思う?」勿論隆には想像もつかない。長い間行き来が無かったのに久しぶりに隆の顔を見たいと昨日急に連絡があったそうだ。

「おかしいやろ?私も何か変やなと思って聞いてみたんよ。そしたらな、びっくりするようなこと聞かされてな・・・」

「びっくりするようなこと?・・・なんなんやろ?」母親が話し始めた。


(二)


 生霊(いきりょう)という言葉をご存知だろうか?諸説ありますが、一説には生きている人間が霊体を飛ばして相手に憑りつく云々とあります。今回の話はその生霊に関わる話です。

 隆の母親の話は今日見舞いに来てくれたおばちゃんの孫に熱が出て、お医者さんに診てもらったけど、一向に良くならない。しかも原因すら分からなくて困っていた。もともと田舎の人間で現在も本家は田舎にある。田舎の村落にありがちな霊媒師、祈祷師に本家から言われて孫をみてもらうことになったそうです。田舎の人間とは言うもののそこは現代人のことなので、本家の顔を立てることが出来たらそれでいい・・・そんな考えでみてもらったらしいです。

その霊媒師から意外な名前が出てきてみんな驚いたそうです。

霊媒師が言うには「親戚の子供に「隆」という子がいるはずだ。その子が今病気で入院している。親元を離れての入院で辛い、寂しい思いをしている。その子の生霊がお孫さんに憑いている。その子を見舞って慰めてやりなさい。それでお孫さんは快方に向かうはずじゃ。」と。「隆・・・ミキちゃんとこの子の名前違うか?」「そうやわ。ミキちゃんとこの子の名前や。長い事連絡とってないわ。」

「誰でもええからミキちゃんに連絡して隆のこと尋ねてみ。」となっておばちゃんが見舞いに来たと教えられた。

「何それ?生霊って・・・知らんで僕。」

もちろん隆が知る由もない。

母親はそんな事もあるかもしれへんな。科学が発達しても、世の中には科学で解明できひん事はいっぱいあるからねとほほ笑んだ。

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