命がけの戦い

「くそ、血が……止まらない」

 腹部を抑えるがドクドクと血が流れでる。すでにあたりは血の池だ。

「『プロテクト』」

 これ以上の被害を防ごうとマサムネさんが防御態勢に入る。

「こいつら、何? プレイヤーへの攻撃ってありなの?」

「ありだ。『プレイヤー狩り』って名前がある」

「なにそれ! とんでもない仕様ね!」

 お金の入手方法にプレイヤーからの奪うのもありだとマサムネさんから聞いてはいた。しかし、泥棒のようなものだと考えていた。まさか、強盗とは!


「プレイヤー狩りには『お金が手に入る確実な方法』、『普通のモンスターを倒すより経験値が多くもらえる』というメリットがある。もちろん、失敗すればタダでは済まないというデメリットがある。だが、今ここで仕掛けてきたってことは……」

「そうさ、そこの魔法使いのかっこうを見て思ったんだよ、こいつら手負だから楽勝だってなぁ!」


「ミホ、アキラを連れて後方に下がれ! このままだと、アキラを守りながらは戦えない!」

「了解よ!」

 ミホは威勢よく返事をするが、小学生、それも女の子が大学生を運ぶのは無理がある。ミホは僕を運ぶのを諦めて、その場で「ヒール」を唱える。少しは楽になった。


「マサムネにばかり負担がかかるのは良くないわ。いくわよ! 『ブロックチア』!」

 ミホの魔法でマサムネさんの「プロテクト」の表面に薄い膜ができた。これで防御面は一安心だ。ここは僕も援護に入らなくては。


「『スリープ』!」

 僕の隠し玉は三人組の一人に命中すると、そいつは眠りこけた。残りは僕を襲った奴と魔法使い一人だ。

「『クラッシュ』」

 ミホの魔法で残り二人同士がぶつかり合う。マサムネさんは隙を逃さず畳み掛ける。

「『ギガスラッシュ』」

 あっという間に魔法使いはダウンした。残りは一人。これなら大丈夫そうだ。


「あまく見られちゃ、困るな。『アロー』」

 僕たちを矢の嵐が襲い掛かる。その瞬間だった。さっきまで動きを止めていた大地の淵が再びこちらに向かって迫って来る。!

「まずい、ちゃっちゃとケリをつけるぞ! アキラ、『スリープ』だ」

 僕は「スリープ」を使うことを躊躇した。今、ここで「スリープ」を使えば、あのプレイヤーは眠ってしまい、死ぬ。

「くそ、アキラ。優しさは自分を殺すぞ! 『スリープ』を使わないなら俺が片づける。『スラッシュ』」

 マサムネさんが切りかかると相手は避けるためにバランスを崩す。

「『シールドラッシュ』」


 マサムネさんのシールドでの殴打がレンジャーを襲った。最後の一撃は凄まじく、相手を大地の淵から叩き落とした。相手は死んだ。そう死んだのだ。

「おい、とっとと離脱だ。アキラは俺が肩を貸す。ミホ、『ヒール』をかけ続けてくれ。


 こうして僕たちは命からがら大地の淵から逃げ出した。

「ピロリーン」ブレスレットから音が聞こえた。その音はとどまらず、三回ほど続いた。僕たちはプレイヤー狩りを撃退した。しかし、彼らは大地の淵から落ちて死んだのだ。


「さて、なんとか窮地を脱したわけだが。アキラ、いくら相手がプレイヤー狩りでも、躊躇するな。やらなければ、こちらがやられる。つまり、俺たちが死んでいてもおかしくなかったわけだ」

「今回はマサムネさんの言うとおりね。アキラ、あなたは人が好過ぎるわ。この世界で生き残るには覚悟が必要よ」

 二人の言うとおりだが、僕は罪悪感を感じていた。果たして、僕はこの世界を生き残れるのだろうか。



「スリープ」の使用可能や回数、残り二回。

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