迫りくる闇
僕は草原で寝そべっていた。全身がビリビリと痺れている。あれ、なにがあったんだっけ。人喰い花と戦って、勝って、それから――。
そうだ、人喰い花の睡眠粉をくらったんだった! 僕はガバっと起きあがる。
「痛っ」
体が悲鳴をあげている。でも、今はそんなことにかまっている暇はない。周りを見渡すと、まだ二人とも眠ったままだった。
「マサムネさん、起きてください!」
彼を揺すると鎧がカチャカチャと音を立てる。だめだ、起きそうにない。
「ミホ、起きろ!」
こっちも同じだ。どうすればいいんだ。こうなったら――。僕は思いっきりマサムネさんをビンタした。これでどうだ。
「アキ……ラ。助かった。おかげで、目が覚めた」
まだ本調子ではなさそうだ。マサムネさんはゆっくり起きあがると僕を見る。
「その恰好、どうした?」
服は真っ黒こげだった。そうだ、「サンダー」を落とし続けたんだった。僕は簡単に説明する。
「なるほど。眠ったところをモンスターに襲われるか、『サンダー』でダメージを受けるか。アキラは後者を選んだわけだ。命がけだが、悪くはない。さて、あとはこの我らが女王様を起こすだけだが……。それにしても、やけに暗いな。人喰い花と戦った時は昼だったから、半日眠りこけてたのか。どおりで――」
「マサムネさん、あれ!」
僕の指した先には――大地の淵があった。
「おい、この暗さ、夜じゃなくて、大地の淵が近いからか! くそ、早く離れるぞ」
マサムネさんがミホを抱えると僕たちは走り出す。
逃げども逃げども大地の淵は追って来る。このままじゃあ、体力切れする。そんな心配をしていたが、淵が急に動くのをやめた。どうやら、他の淵が狭まりだしたらしい。これで一安心だ。
「アキラ、これを飲め。もう少し淵から距離をとったら、飯にするぞ」
ポーションを受け取ると、一気に飲み干す。そうだ、HP回復がまだだった。
「で、私たちは危機一髪だったわけね。
ミホにしては珍しくしおらしい。まあ、三人ともゲームオーバーするところだったのだ、彼女も責任を感じているに違いない。
「結果的に助かったんだ、さあ飯だ、飯」
僕たちは焚火を囲いながら今後の方針を話し合う。
「まずはポーションの補充だな。今回の一件で底をつきそうだ。商人に会わなきゃならん。それまでは例えウルフだろうと、戦闘は避けるべきだな」
もっともだった。ミホの「ヒール」を使うのは最後の手段だ。
「あんたたち、ひどいかっこうしているな」
どこからともなく声がする。声の方を向くと、三人組が立っていた。議論に夢中になり過ぎたらしい。
「そこの魔法使いの様子からすると、モンスターにこっぴどくやられたようだな」
「ええ、そうです」
まあ、このかっこうは自分自身に「サンダー」を落としたからなんだけど。
「ポーションの在庫は十分なのか?」
「いや、もうすぐ尽きそうだ」
マサムネさんが首を振る。
「なら、これをやるよ。困った時はお互い様だからな」
「ありがとうございます!」
僕がポーションを受け取ろうとした時だった。
腹部から鮮血が飛び散る。
「馬鹿め。そんなうまい話があるわけないだろ」
「こいつら、プレイヤー狩りだ!」
「スリープ」の使用可能や回数、残り三回。
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