第8話 やっぱり(病み強めご注意)
最近、あの人の態度が素っ気ない。
きっと 今この瞬間にも他の人の事を想ってる気がする。
誘うと「うーん」としか言ってくれない。
会えない理由すら話してくれないの。
話す価値も無いのかと思ったらネガティブのどん底に落ちちゃう。
私が記憶しているあの人は虚像だと仮定したら、全て辻褄が合う。
思い起こせば、優しくされた事が無いのに、優しい人だと思い込み。
私の都合の良い解釈で愛が成り立っている気がしていた。
一緒にいる間でも他のことを考えていて、何質問してもはぐらかされる。
本当のあの人は、何を考えているのか、いつまで経っても掴めない。
手を伸ばしても掴み取れないものに関心を持ってしまったのかもしれない。
今更後悔しても遅いよね。
それでもあなたが好きなの。
殺したいほどに──。
数日後、ネットで見た、若い男性が背後から刺されて死亡したニュース。
原因は複数恋愛関係のもつれだったって。
そうやって想いを遂げて、相手を永遠に自分の心だけに住まわせるのって『究極の愛』なんじゃない?と、第三者目線で考えていた。
更に数日後、漠然と憧れていた非現実の闇に打ちひしがれることになった。
若い男性は、彼氏だと思っていた男。
殺したのは、知らない女。
居合わせたのも、知らない女。
私は、あの人を取り巻く『登場人物』にも、なれやしなかったのだ。
裏切りの末路は、呆気なく幕引きされた。
刺した女が私なら良かったのに。
瞬間に散る目の前の命に涙し、朽ちるまで唇にキスしたのに。
非常階段で殺すなんて、そんな雑な扱いはしなかったはず。
あーあ、馬鹿みたい。
存在全てが、まやかしだった。
嘘の塊だった、あの人。
興味失せたわ。
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