第9話 私だけでしょう?

きっとね。

私の知らないうちに、あなたへの想いは既に散っていたんだね。

現実に引き戻されたくないから、都合の良い解釈をして、自分の気持ちに酔い続けていた。


大好きだった。

愛おしそうに細めた目に映るのは、たった一人。私だけだと思っていた。


愛していた。

時々、誰かと言い争いながら電話していた事を知っていたけど、身内の方だと思い込んでいた。


殺したかった。

私だけの、あなただった。

……愛しすぎてたから殺したかった。

裏切りに制裁を与える仕事は、私だけだったはず。


誰かが、最期まで『横取り』していった。

悔しさはあるけれど、心のどこかでホッとしている自分がいる。

手中から離れていった事に安堵している。

私には手に余る男だと、直感で気づいていたんだ。

だから、誰か知らないけれど感謝します。


この世界からあの人を永遠に消してくれてありがとう。

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