第4話 ふっ。

 最近、彼女と上手くいっていないみたい。

 やったぁ、上手くいった。


 ネットで繋がってるだけの彼。

 お互い顔も見た事ないし、どこに住んでいるのかも知らない。

 タイムラインの文章を読めば、とっても穏やかで優しい人だって分かる。

 弱ってる人を放っておけない性格みたい。

 いつも気遣ってくれるから振り向いて欲しくて、わざと弱音吐いてみる。

 予想通り、すぐ返信してくれる。


「大丈夫?何か悩みあるの?」


 ってね。

 本当は大して悩んでもいない。

 あなたの気を引きたいだけで、時々、嘘ついて、ネットで拾ってきたネタを使ったりしてる。

 最初は、感染症が大流行して、リア友に会えない日が続いていて寂しかった。

 独り言を呟いているうちにネッ友が出来て、次第に輪が広がっていった。

 あるグループにお迎えされた先に、彼がいた。


 ある時、彼にはリアルに好きな人がいるって知った。

 いつまでも進展しない関係性に悩んでいるって打ち明けられた。

 知った瞬間に、誰かに取られるって気持ちが原動力になって湧き出た嫉妬心。

 見たことのない『彼女』を想像して、


「彼女は〇〇って思ってると思うよ」

「彼女はモテるから大変だね」

「そんな発言してくるって、彼女、性格歪んでるんじゃない?」


  彼には彼女に対して『不信感』を持って欲しいから、相談を受けながら、ある事ない事を想像しては、彼に伝え続けた。

 優しい彼は、人の意見に流されやすいのを私は知っている。

 繊細な心に潜む闇を、ちょこっとだけくすぐる。

 

「彼女は、そうかもしれないね」


 少しずつ疑心の種を蒔いていた。

 やっと芽が出そう!

 彼は私の承認欲求を満たしてくれるから、どこにもいって欲しくない。

 私だけの『彼』でいて欲しいんだ。

 いつでも携帯を見れば繋がれる、永遠に続いて欲しい。

 やり取りは文章のみだから、いくらでも可愛くて儚い女の子に化けられる。


 もし会いたいって言われたら?ふっ、会わない、会わない!

 オシャレしたって可愛くないし、コスメや洋服やネイル……初期投資にお金かかるし、何より会ったら性格腹黒がバレて幻滅される。

 会わなくても、言葉一つで繋ぎ止められる。

 わざわざ着飾って外出しなくてもいい。


 都合の良い関係でも一番近くにいたい。

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