一つの物語の終わり

「「「「……」」」」


「ふぅ…中々強い魔物ですね」


魔王城の下、ダンジョンの最奥……勇者PTはチートと覚悟を持ってこの場所にたどり着き、王妃は無関心に彼らと向き合っていた


「本当に不思議な魔物です。大きさや形はそんなに変わらないのに全然違う攻撃をするんですから……」


「……前衛で足止めする…遠距離は任せた」


勇者PTがコンビネーションで王妃に立ち向かう。人間として全力にチートを使い、互いで連携を取り、言葉と視線で意思疎通を行う……。王妃はその様子に疑問を覚えるが、始原と魔族の世界に置いて、自分たち以外の[人]がいることなど考えられない彼女からすれば、そんな疑問もまた、未知な魔物の特徴でしかない


「っち!なんてでたらめな魔力だ!!!」


「でもおかげで魔法が実質無限に使える!」


「油断するなよ!!!」


魔力の回復は自然回復の他に外部からの供給でも行える。通常はポーションなどの回復アイテムを使うが、極々微量に呼吸から魔力を回復することが出来る。この地の膨大な魔力はそんな極々微量な回復でさえ、全快に近い効果を引き出していた


「不思議です……ダメージを与えても回復してしまいます。彼らのお肉は無くならないんでしょうか?」


かく言う王妃は彼らの状態を不思議そうに眺めている。彼らの魔力の使い方は彼女達にとって異彩だった。マイルーム以前の状況など忘れてしまった彼女にとって回復魔法を完全に見落としていたのだ……彼らが実質無限に魔法を使える状況において負けることがない戦い。王妃が、そのことを思い出し、ゲームのように回復役を倒すことを思いつかなければ王妃は勝てない……しかし、彼女の途方にも無い時間の流れで固まった考えがこの瞬間に溶けることはない。彼らが自分たちと同じで[人]であること、[魔法]が使えること……そのことに気が付くにしては、目の前の彼らは魔物のような力を持ちすぎていた


_____


「……彼らのことを言えませんね……」


魔力は直接傷をいやすことは無い……。魔法によって回復していた勇者PTと傷をそのままに対応した王妃、どちらが勝つかなど……火を見るより明らかだった


「はぁ…はぁ…ひぃ…はぁ……」


「ぜぇ…ぜぇ…はぁ……」


「やっと…おわった……」


「ひぃ…もう…むり……」


肉体的には回復で来ても、精神は満身創痍。回復魔法を入れれば死なないと分かっているからこそ、ダメージのリソース管理を常に考えなければいけない。タイミングが少しでも崩れれば、負ける……そんな緊張の中の戦闘は精神を削った


「おつかれ……」


「あぁ、よくやってくれたよ……」


そのことを勇者PTも分かっているからこそ、回復役を一番に労う……呼吸を整え、柄にもなく倒れ込み全身を弛緩させて倒れ込む。勇者PTからすれば、この人生最大の大仕事を終えた……達成感を噛みしめていた


そんな時、勇者PTも、王妃も知らなかったことが起こる


まず、王妃も始原や魔族の例に漏れず死ねば生まれ直る……ただし、それは一度肉体を捨て、魂にならなければならない…


そして、王妃の身体が無くなれば……胎内にあるはずの……マイルームの出口が無くなった


「え…な……」


勇者PTの誰かのそんな声が聞こえた

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