転生者が一人とは……
「ふぅ……ここのモンスターは強いな」
屈強な鎧と光り輝く剣、そして白く巨大なドラゴン……
そう、一般的なチート持ち転生者というのはこういうものである
元々原始時代と同じレベルの文明においてチートスキルは、まさに現代兵器を持ち出したかのような無法者であった。すでに彼の転生した町は数世紀先の技術を継承しており、彼は自由に放浪している。戦争も何もない平和な世界……彼は人間の生活圏を飛び出し、強者を求めていた
「チートでこいつがいなければ死んでいたな……」
ギフトの中でも指折りのチートとされる[白竜の卵]、上級神の眷属であり、中級神と同等程度の実力を持つドラゴン。この世界では後に[ゴッドファザードラゴン]と呼ばれる存在
「しかし、ここのモンスターはとんでもないな……」
RPGで言えば、ゲームクリアした裏ボスのいるステージレベルと言えるその難易度。チートがなければ、人類は成すすべなく滅ぼされるそんな厄災たち。最強クラスのチートである白竜ですら苦戦するレベルだ
「ん?なにか魔力を感じる?……いや…魔力が広がってるのか?」
[白竜の卵]がチートであるのは白竜自身の能力だけではない。ギフトを貰った転生者にも白竜の能力を使うことが出来るのだ。つまり、二人で成長すれば文字通り二倍の成長をする……戦力も二倍だ
「まさか…この世界にも魔王ってのがいるのか?」
転生者はお約束の思考をして、魔王がいることを予想する。そして転生者にとって魔王とは物語において討伐しなければならない存在だ
「あぁ……いこう!」
そうしてドラゴンに跨り、魔力の中心に向かうとそこには文字通りの魔王城があった
「……やはりか…」
ドラゴンは目立つので隅で縮小化のスキルを使おうとした……が……
____ビュン
「っ!!!」
____グッ…アァァ……
そんな暇もなく、ドラゴンの腹に風穴が空いた
重力に従い、ドラゴンは落下……乗ってた転生者も落ちる
「な…なにが……」
そう口に出す。白竜も転生者もこの程度のダメージで死ぬことはない。ドラゴンは自然治癒にまかせれば2日で全快する。転生者にしてはほとんどダメージは無い
「あちゃー!しくじったべーーー」
「なにしてるだ…せっかくのごちそうを……」
「っ!?」
転生者は話し声がする方に意識を向ける。するととんでもない魔力を持った人間の姿をしてるが、人間にない特徴を持ってる存在を見た……
(魔族?……魔王がいるわけだから居てもおかしくない……が……)
「お…おい!…トカゲの横になにかいるべーー!?」
「っちバレたか!」
白竜の陰に隠れていたが、バレてしまい。外に出る……相手は二人……
「お前らがさっきの攻撃をしたのか!?……答えろ!!!」
武器を構えて、相手を見る。しかし彼らは歩みを止めることは無く……
「あちゃーこれは腹の足しにもならんべ…肉が無い」
「んだんだ。おまけに固そうだべな」
「は……?」
そんな雑談をしながらの片手間で転生者は首を刎ねられた……先ほどの白竜を仕留めた攻撃の数十倍の威力を一瞬で受けたので、その切断面は綺麗で……落ちた頭はまだ己の死を受け入れることが出来ない
「それにしても、へんなやつだべー。まるで言葉を話してるみてぇな泣き声だったべな」
「おかしなことを言うな~…だ~れも言葉をおしえてねぇのにしゃべるわけねぇべ」
そう…目の前の彼らの見ている世界は、とても狭い。[自分達]と[それ以外]だ。この大陸での生活において、自分たち以外に人間がいるとは微塵も思っていない。例え姿が似ていても、それよりおかしいモンスターを見慣れている彼らにとっては「それくらい」のモンスターでしかない。着ている鎧や武器も自分たち以外の存在がモノを作るとは思っていないから、そういう皮膚や爪であると認識していた
「うわー食いどころがねぇ……。燃やすか」
そうして転生者の亡骸は灰になり、白竜の身体は彼らの胃袋の中に入った
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