そのころの王妃

「うわぁ~♪めんこいなぁ~♪」


「んだんだ♪子供はかわいいべぇ~♪」


もはや最初の集落の様な面影が無く、大量の魔物の骨と魔法によって作られた前衛的な建築物がならぶ。しかし、転生者の世界に合った創作のような派手さや美しさはなく機能美を詰め込んでいる


かれこれ、百年近く続いた彼らの時間間隔はどんどん人として狂い始めていた

まずは子供の出産、俗にいう所のベビーブームのように特定の時期に出産をする人たちが増えたのだ。ここら一帯は強力な魔物の群生地となっており狩りに防衛に忙しいと言う訳でもないのだが、なんとなく続いた伝統の生き証人たちが現存しているこの場所は、昔の様に祭りを行っていた。時間の流れの中で祭りの意味は朽ちることなく、ただ、意味が付けたされて行った。その中の一つに安産祈願のような概念が入り込んだだけだ


「ふふ、沢山の子供が生まれましたね」


「あぁ、王妃様…ぜひこの子達を抱いてくだせぇ…」


「はい♪もちろんです」


マイルームのせいで魔力の供給装置と化した王妃、彼女が子供を抱き上げるとその子供に人間としては高濃度の魔力が流れ込む。ただでさえ、周囲の魔力量が多い環境で生まれ、魔力に馴染んだ彼らを鍛えるかのように高濃度の魔力を浴びせていた。そして、元が小さな集落と言えるような小さい国であるこの地に彼ら以外の文明が入り込むことはない。従って、小さい集落時代と同じように王妃は子供たち全員と触れ合うのだ


「しかし、この子らのこれはなんだぁ?魔物みたいなツノじゃな」


「この子は小さいが羽が生えておる。大きくなったら飛べるんじゃろうか」


……そんな人間にとって毒にもなる環境で生まれた子供たち。この世界があと数千万年進んだとしたら、彼らは魔族と呼ばれるだろう。魔族とは創作の世界であるように人間にとっては天敵であり、滅すべき存在である…という認識が幾多の世界における共通認識だったりする。だがしかし、この国は基は外交を一切しなかった集落であり、文明を口頭で伝えられるほど長寿であり、そしてなにより…無知であった


「よ~し!この子らが飛べるようになったら一緒に狩りに行けるように魔法を研究するべ!」


高度な魔力が流れ込み、一帯を変えたこの場所において。後に始原と呼ばれるであろう人達は強力な魔物との命の駆け引きの合間に魔法を研究するほどの余念があった

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