そのころの王妃
「おやぁ、王妃様。今日も美しいですなぁ」
「ふふっ、ありがとう」
元々美しかった王妃、この世界の人、というよりこの国、村の人々には時間と言う概念が無い。そんな世界では年齢という概念も当然なく、人々は美しい王妃の姿を見ていた。
もし、この世界に転生者が生まれていたら間違いなくこう言ってたと思う。
「なんで老けないんだよ!」
彼此、王妃の病とされた異常の食欲から数年、この国にいる国民も王族もみな、全く年を取っていないのだ。それがこの世界の当たり前?老化があったのは地球のある世界だけ?そうではない
「王妃様~!今日も立派な野菜が取れました」
「王妃様!これが今日仕留めて来た魔物です」
そう、王妃に見せられたのは子供の背丈くらいある巨大な野菜。そして王族の住んでいる城(だいたいアパートくらいの大きさ)に匹敵する魔物だ。これらは数年前まで普通ではなかった
それもこれも、この世に転生するのを拒んでギフトで引きこもっている転生者のせいである。ギフトマイルーム、それは自分の部屋となる異空間に移動するギフト、だが、マイルームと現世が全く切り離されているということはなかった。転生者がまだ一度も開けていないこちらの世界へと続く扉、そう扉なのだ。こっちの世界とマイルームをつなぐ扉がある。それは王妃の子宮の中にあるのだ
マイルーム内で生活し続けた影響で魔力を順調に成長させる王子、その影響でマイルーム内の魔力濃度も上昇している。すでにこちらの世界の空気中にあるそれを優に超えている魔力は低いこちらの世界にも流れ込み。王妃の身体を介してこの世界にも影響を与えていた
それが、この国の人々の老化の遅れと……魔法の効果増大の原因であった
「しかし、毎日毎日魔物が出てくるようになりましたなぁ~」
「そうですね。油断をなさらない様にお願いします」
「王妃様~!畑の拡張をしたいんだが、ええか?」
「はい、危険のないように広げてください」
人々が強くなったことで生活圏が増えていく……。この世界で人間と縄張りを争っている魔物は小さくて弱い。魔力の濃度が上がって強くなった人間に住処を追われるのも自然なことだ。
だけど、その恩恵を受けたのが人間だけということもなかった。この国周辺の魔力濃度が上がったことで、別の住処にいた食物連鎖に敗れた魔物達がこっちに流れてくるようになった。彼らだって生きている。ただ、強者の肉になるだけではない。外敵のいない安全な場所に逃げてくるのも当然だ。今までは住処の中では底辺でも外では強かったがために魔力が足りずに出られなかったが、彼らが住めるようになった今は違う。人目に触れなかった魔物達がこうして人目に出てくるようになったのだ
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