第5話 お兄ちゃんのあそこを大きくするぞ~

 私の影武者にお母さんが立候補したんだけど、ビアンカさんとフローラさんはハッとして「その手があった(ありましたわ)~!」と言った。


天使の2人より、お母さんのほうが適任だと思うけど…。



 「お母様。柚子さんの影武者になったら、お仕事はどうされるんです?」

フローラさんが心配そうに尋ねる。


お母さんはパートに出ていたはずだ。そっちも1か月休めないよね…。


「心配ないわよ。パートは昨日辞めたから」


「そうなの? 初めて聴いたよ」

私に話してくれないなんて…。


「別に隠すつもりはなかったけど、タイミングの問題ね。近い内に言う予定だったのよ」


「そうだったんだ…」


私の影武者をする間は、仕事を探さないって事だね。


「よし、これで全て丸く収まるね。話をまとめようか」


ビアンカさんの提案に、私・お母さん・フローラさんが頷いた。



 「まず、柚子っちは部屋であたしとマンツーマンね。食事・トイレ・風呂以外は出さないからよろしく」


「わかった…」

部屋に缶詰めって事だね。


「柚子っちのお母さんは、柚子っちに成りすまして登校して下さい。話はうまく合わせてもらえれば」


「了解よ」


「フローラちゃんはこの家の家事をしつつ、透明状態で柚子っちのお母さんを見守ってフォローして」


「わかりましたわ!」


「これで問題ない…よね?」


私もビアンカさんみたいにスッキリしない。何だろう? 何が抜けてる?


「…ちょっと待って下さい! わたくしと先輩がお兄様に見つかったらどうするんです? 天使がこの家にいたら、怪しいではありませんか!」


確かにそうじゃん! 何で今まで気付かなかったんだろう?


「そんなの適当に“記憶操作”すれば良くない?」

ビアンカさんは平然と答える。


天使は魔法で記憶を消せるって聴いたけど、操作もできるんだ。私もなんかやらかしたら、ビアンカさんにいじられるね…。


「天使って凄いわ~」

お母さんが驚きの声をあげる。


「そうでもないですよ。さっきはああ言ったけど、人にかけられる魔法はある程度制限されてますから」


天使の技術力があれば人なんて簡単に支配できると思うけど、それについて訊くのは止めた方が良さそう。気に障ったら怖いし。


「他に気になる事ある?」

ビアンカさんは全員の顔を見渡す。


……特に誰も反応しない。私も気になる事はないかな。


「明日から柚子っちのお兄さんのを大きくするために頑張るぞ~!」


「お~!」


ビアンカさんの掛け声に…、お母さんが乗った。ずいぶん楽しそうだな~。


柚希ゆずきも大切だけど、もう1回高校生として過ごせると思うと嬉しくてね」


私の視線に気付いたお母さんが無邪気な様子で言う。あんなお母さん初めて見た…。


「せっかく柚子っちのお母さんが乗ってくれたのに、柚子っちとフローラちゃんも乗ってよ!」


「内容が内容ですし…」


私はそういうのが苦手なだけ。フローラさんと違って、内容は関係ない。


「みんなの力を合わせないと、柚子っちのお兄さんのは大きくできないよ」


「…確かにその通りですわね。先輩、もう1回言って下さいな。柚子さんもよろしくて?」


「わかりました」

苦手でも、空気は読まないとね。


「頑張ってを大きくするぞ~」


「お~!」


こうして明日から、私達4人はお兄ちゃんののために奮闘するのだ…。

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