第4話 お母さんが影武者に?

 私がビアンカさんのマンツーマン指導を受けてる間は高校に行けないので、フローラさんが影武者をしてくれる方向になってるけど、彼女はお嬢様口調だからすぐ見破られそう。


一体どうすれば良いの? 他のアイディアが何もないよ~。



 「先輩。柚子さんの魔法指導はわたくしがしますので、先輩が柚子さんの影武者をやって下さいな」


確かにその方が良さそう。ビアンカさんに特徴的な口調はないからね。


「ヤダ! 魔法指導のほうが“貢献ポイント”はたくさんもらえるんだよ? 早く昇進して給料上げたいんだから、あたしが魔法指導やるの!」


…ビアンカさんはお金にがめついタイプみたい。


「フローラちゃんが柚子っちの口調にすれば良い話じゃん!」


「確かにそうですけど、誰にだって曲げられない事はありますよね? わたくしの口調を変える事は、先輩に例えると『“貢献ポイント”を気にせず人助けしろ!』になるんですのよ?」


口調ってそんなに大切な事? そう言いたかったけど、頑張って堪える。


「それは無理な相談だよ」


「でしょ? だからどうしようもないんです」


「それじゃやっぱり、私は高校辞めるしかないって事?」

1か月も休み続けたら、間違いなく留年だね。


「それは困るわ。柚希ゆずきが大きくならないのも困るけど、柚子が中卒になるのも…」


「お母さん。だったらお兄ちゃんに養ってもらうしかないね。お兄ちゃんの子供のために!」


お兄ちゃんのが大きくならないと、鷹取家は終わっちゃうよ。


「柚子。それもダメ」


笑顔で止められた。悪くないと思ったのに…。



 「先輩。ふと思ったんですが、お兄様のって今どうにかしないといけない事なんですか?」


フローラさんがつぶやく。よく考えたらそうかも…。


「フローラちゃん、どういう事?」


「お兄様は、今すぐ子供が欲しい訳じゃありませんよね? だったら来年の柚子さんの夏休みまで待てば良いのでは?」


「一理あるね。けど2つ気になる事があるんだよ」


ビアンカさんは何が気になるんだろう?


「2つ…ですか?」


「そう、1つ目は一目惚れとかをした時。『今すぐこの人と子作りして~』と思うかもしれないじゃん?」


「そうなんでしょうか…?」


「2つ目は手柄を取られる事。魔法指導は大変だけど、その分多くの“貢献ポイント”がもらえるよね? だからライバルの存在が気がかりなんだよ」


「なるほど…」


ビアンカさんとフローラさんが話し込んでるけど、良いアイディアが全然出てこない。万策尽きちゃったのかな…?



 「ねぇ2人とも。ちょっと訊きたいんだけど…」

お母さんが申し訳なさそうに口を開く。


「どうかしました? 柚子っちのお母さん?」


「わたしが柚子の影武者になる事はできる?」


お母さんの質問の後、ビアンカさんとフローラさんは互いの顔を観て…。


「その手があった(ありましたわ)~!」


そう2人で同時に叫ぶのだった。

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