第3話 魔法の前に病院でしょ?

 『お兄ちゃんのを大きくしよう作戦』をリビングにいるお母さんに伝えるため、ビアンカさんを先頭に私とフローラさんも続く。


話がトントン拍子で進むから私は驚く暇がなかったけど、お母さんが天使を見たらどういう反応をするんだろう? 状況によっては止めないとね。



 リビングに向かうと、お母さんはテーブルの椅子に座りながら録画したドラマを観ていた。私達に気付いたお母さんは、ドラマを一時停止させる。


「あらまぁ、かわいい天使ね~」


この反応、初めて観た感じじゃないな。


「お母さん、天使観た事あるの?」


「小学生の頃に1回ね。柚子に言う必要ないから黙ってただけよ」


「ちょっと話したい事があるんですけど良いですか~?」


そう言ったのはビアンカさんだ。


「良いわよ、時間もあるからね。好きに座りなさい」


私は…お母さんの横で良いや。4人掛けテーブルだし、そのほうが合うと思う。


「あたしは柚子っちの前にしよ」


「ではわたくしは、お母様の前にしますわ。…失礼いたします」


これで全員座ったから、話を進められるね。



 「柚子っちのお母さん。最近、柚子っちのお兄ちゃんのが大きくなったのを観た事あります?」


「え!?」


フローラさんが驚きの声をあげる。そういえば、私の影武者の事しか話してなかったっけ…。


「フローラちゃん、ちょっと静かにして」


「…わかりましたわ」


「それでどうですか? 最近観ました?」


私が観てないだけで、お母さんは観てるかもしれない。


「観てないわね。柚希ゆずきには性欲がないのかしら? 柚子はどう?」


「私もまったく観てないんだよ。お母さんもなんだね」


「〇ん〇んを大きくするために1か月、あたしに付きっきりで魔法の修行を柚子っちにさせたいんですが…」


「1か月は長すぎるわね。その魔法の修行と学校は両立できるのかしら?」


「多分無理だと思います。なのでフローラちゃんに柚子っちの影武者をさせたいんです。…フローラちゃん」


「わかりましたわ」


そう言った後、フローラさんの体が光に包まれる。光が消えると…、そこには私そっくりに変身したフローラさんがいた。


「あらまぁ、柚子そっくりね」


「これが魔法の力ですわ!」


凄い。外見だけじゃなくて、声も真似できるんだ。だけど…。


「その話し方、どうにかならない?」


お母さんもそこを気にしたか。


「努力するつもりですが多分無理ですわ。生まれてこの方、ずっとこの話し方ですので」


「お嬢様じゃないのにね~」


そうなんだ? この2人は先輩・後輩らしいけど、それ以外の繋がりがあるような…。


「余計なお世話ですわ、先輩」


フローラさんは魔法を解いて元の姿に戻った。


「影武者は後回しにしましょうか」

お母さんの提案に全員頷いた。



 「それよりも先輩。さっきから気になっていたんですが…」


「何かな? フローラちゃん?」


「魔法でお兄様のを改善する前に、病院に行くのが先なのでは?」


フローラさんの指摘は当然だと思うけど…。


「はぁ…。フローラちゃんは全然わかってない」

ため息をつくビアンカさん。


「何がですの?」


「男はプライドが高いんだよ? 『〇ん〇んが大きくならないね、病院行けば?→行く!』にはならないの!」


「フローラさんだったかしら? 病院に勧めると、柚希を傷付けちゃうかもしれないの。できるなら、こっそり治したほうが良いわね」


お母さんも魔法で何とかして欲しいみたい。


「なるほど…。男の方も複雑ですのね」


「そういう事。人助けはあたし達天使の本分だし、ベストを尽くさないと!」


「了解ですわ! 先輩!」



 魔法でお兄ちゃんのを大きくする方向は良いとしても、影武者の件は曖昧のままだ。これを何とかしないと話は進まない。どうすれば良いのかな?

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