第2話 天使の謎

 お兄ちゃんのを大きくする魔法を覚えるには、天使のビアンカさんに1か月付きっ切りで修業しないとダメみたい。


それだと高校を留年しちゃうので、彼女の後輩のフローラさんがサポートしに私の部屋まで来てくれるみたい。その間にビアンカさんに色々訊いてみよう。



 「あの、天使についてもっと知りたいんです。ビアンカさんは何で私を助けてくれるんですか?」


「それはね、仕事だからだよ」


学習机の上に座っていた彼女は、ベッドのふちに座っている私の隣に移動する。


「仕事?」


「そう。『エンジェルガード』というのが、あたしがいる組織の名前」


「そこはどういう組織なんですか?」


「人間の世界で言うと“警察”かな? …いや『何でも屋』に近いかも?」


全然違うんだけど…。


「とにかく、人助けがメインの仕事なの。人助けをすると“貢献ポイント”が貯まるんだよ。ポイントの量によって昇進や昇給するんだ~」


「なるほど、目的はわかりました。ですが、天使が気軽に姿を見せて良いんですか? SNSに拡散されるかもしれないのに」


「その心配は無用だよ。魔法で変装したり姿を消せるからね。それに、カメラのような機械に天使は映らないんだよ。だから拡散される心配はないって訳」


「へぇ~。でも口コミもバカにできませんよ?」


「そこまで行ったら、記憶を消させてもらうけど」


何気に怖い事言ってるなぁ…。別に誰かに言うつもりはないから良いけど。



 「先輩、お待たせしましたわ」

部屋の壁をすり抜けて、青髪の少女が現れた。


彼女は私達の前で華麗に着地する。


「フローラちゃん、やっと来たね」


フローラさんの身長はビアンカさんより高い。ビアンカさんが小4・5あたりに見えるけど、彼女は中1ぐらいかな?


白いワンピース・頭の上の輪っか・背中にある羽は一緒みたいだね。


「これでもすぐ準備して来ましたわ」


「はいはい。…こっちにいるのがさっき言った柚子っち」


「柚子さんですね。わたくしはフローラ。よろしくお願いしますわ」


自己紹介の後に頭を下げるフローラさん。ビアンカさんよりしっかりしてるけど、本当に後輩なの?


「鷹取柚子です。こちらこそよろしくお願いします」


「これで自己紹介は終わったね。さて、柚子っちのお母さんのところに行こっか」


ビアンカさんは勢いをつけて立ち上がったけど…。


「待って下さい。どうしてお母さんにあの話をする必要があるんですか? 」


『お兄ちゃんのを大きくしよう作戦』のことだ。お母さんは関係ないのに…。


「柚子っちは未成年だからね。保護者の許可もらうのは当然じゃない?」


「柚子さん、親の観察力を甘く見てはいけませんわよ。わたくしの影武者なんて、すぐ見破ってしまうと思いますわ」


その口調のままだったらすぐバレるね…。


「そう言うけどさ。柚子っちに似せる努力はしてよね、フローラちゃん」


「一応努力しますけど…」


「よ~し、今度こそ柚子っちのお母さんのところに行こう!」


ビアンカさんが先に部屋を出たので、私とフローラさんは後を追う。

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