第26話「このぬいぐるみは一生、大切にしますね」
「おままごとセット?」
「お人形遊びをする時に、これがあるかないかで深みが段違いで変わるんですよ」
「アドバイス、サンキュー。ええっと……どれどれ。うーん、おままごとセットって言っても、結構いろいろあるな。どれがいいんだろうか?」
パッと見ただけでも、コーヒーマシンのおもちゃが付いたカフェセットとか、おもちゃの包丁で切ったりできるキッチンセットとか、お店のレジ打ちごっこができる店員さんセットとか、いろんなものがありすぎて、俺にはどれがいいのかさっぱり分からなかった。
しかしミリアリアは違った。
ミリアリアは軽くコーナーを見渡しただけで、すぐに一つのおままごとセットを指差した。
「個人的にはこのレストランセットがお勧めです」
「その心は?」
「食事はお人形ごっこの一番の基本ですから。そしてレストランセットは、お寿司屋さんセットなんかとは違って、多種多様なメニューが幅広くあるのもポイントが高いんです」
「詳しい説明をありがとう。サファイア、これを一緒に買おうと思うんだが、どうだ?」
「すごく、ほしい!」
「ははっ、OK」
おままごとマイスターなミリアリアに的確なアドバイスをいただき、俺はぬいぐるみを2つとレストランセットを購入すると、まずはぬいぐるみをサファイアとミリアリアにそれぞれ渡した。
「むらさめ、ありがとう、ございます。すごく、うれしい!」
サファイアがポメ太を抱っこしながら、丁寧にお辞儀をする。
「おっ、偉いじゃないか」
「えへへ……ママが、おしえて、くれたの」
俺が優しく頭を撫でてやると、サファイアは嬉しそうに目を細めた。
「わたしもありがとうございました。このぬいぐるみは一生、大切にしますね」
続いてミリアリアがやけに弾んだ声で、嬉しそうに笑う。
「一生って、またえらく喜んでもらえたみたいだけど、ピースケ2号がそんなに気に入ったのか?」
少し気になったので聞いてみる。
「だってカケルパパからの初めてのプレゼントですから。嬉しくなっちゃいますよ。えへへ」
――っ!
まったくミリアリアときたら、いきなりドキッとさせるようなことを言いやがってからに。
自分がすごく魅力的な女の子だってことを、ミリアリアはもっと自覚したほうがいいと思うぞ。
でないと世の男どもは、余計な勘違いをしてしまうだろう?
かく言う俺も今の瞬間、かなりドギマギしてしまった。
オペレーション・エンジェルなんて最重要任務の真っ最中じゃなけりゃ、ミリアリアが俺のことが好きなんじゃないかと勘違いした可能性すらあった。
いやむしろ、これを機になし崩し的にミリアリアとそういう仲になっちゃえみたいな悪魔のささやきが、俺の脳裏にうっすらと聞こえてしまったくらいだ。
それくらい今のは魅力的な笑顔だった。
しかし家族でほんわか買い物をしている今も、任務中だ。
俺はミリアリアの笑顔に高鳴る心を押し殺しながら、平静を装って言葉を続ける。
「まぁ、俺が金を出した訳じゃないんだけどな」
「ですがカケルパパから貰ったことには変わりありません。だから一生、大事にします」
「そ、そうか。そうしてくれると俺も嬉しいよ」
「はい♪ そうします♪」
ああもう、だからそうやって上目遣いで頬を赤くしながら、嬉しそうな視線をむけてくるなっての!
俺も男なんだから、そんな風に女の子の魅力をぶつけられたら、マジで変な勘違いをしてしまうだろ?
「あの! サファイアも、いっしょー、だいじに、する!」
「ありがとな、サファイア。そうしてくれると嬉しいぞ」
とまぁミリアリアの魅力になんともドギマギさせられながら。
その後、ちょっとした小物を買ったりしつつ、俺たち3人はイヨンモールでの買い物を楽しんだ。
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