十一話 ルナティック その壱
さて、最終決戦ということで、私たち四人は各々武器を持ち、空へと向かう。
今は日の出前。さゆみのプライベートジェットで雲を抜けると、世界より早く太陽の光が見えた。
私たちは他の誰よりも早く、今日の光を浴びているんだと思うと、少し誇らしい気分になる。
「お前ら、準備はいいな?」
運転席の茜先輩が訊ねてくる。
「完璧」
「準備万端ですわ」
それに綴はスタンガンとメリケンサック、さゆみはライフルと大型のバズーカを構えた。
さすがにあれ、実弾じゃないよね……。
そう心配する私は、先輩から託された最強の武器、黒鉄の腕輪を左の腕に嵌めた。
右腕には、壊れたカレイド・リング。
使いものにならないのは知ってるけど、これをつけてないと、カレイド・ネクサスじゃないって、そう思うから。
「そろそろ突入だ。気合い入れてけよ」
そう告げてから、先輩は「転身!」といつもの合言葉を口にした。
あれ? なんでもう転身してるの?
ていうか、なんだかすっごいGを感じてるような気がするんだけど……。
「そういえば先輩って、ジェットの機の免許持ってるのですか?」
「さゆみ、お前はバカか?」
何か嫌な予感がしてきた私は、窓の外を確認する。
そうして目にした光景に、私は思わず声を失った。
…………私たち、あのフォミラのところに行く前に死ぬかも。
「無免許に決まってんだろ! お前ら、突撃するぞ!」
「はいですわ先輩!」
「待てお前! あとで絶対警察に突き出してやる!」
「はっ! あたしは捕まらないさ! なんたって、魔法少女だからな!」
「大丈夫ですわ綴さん! 最初から自動運転なので! 先輩はただ衝突ボタンをポチッと推しただけで!」
「押すなバカ!」
「ねえそうやって言ってる前に自分の身を守ること考えたら!」
私パラシュートもクッションも何も持ってないんだけど! 天空の城にそのまま突っ込むなんてバカな作戦だって知らなかったからさあ!
「ぐるぐるぐるぐるドッカアァンッ!」
「話聞けやこのクソ野郎―!」
私の怒声のとともに、ジェット機がグランドスラムに激突。
間一髪で脱出した私たちは、地面をごろごろと転げ回った。
「よし、作戦成功!」
「何が成功だバカ野郎! 帰る手段がなくなったじゃねえか!」
即座に立ち上がりガッツポーズを取る先輩の頭に、全力の平手を入れた。
なんとかみんな無傷みたいだけど、爆発に巻き込まれて死んだらどうしてくれるつもりだったんだマジで。
「でも、これで突入は成功した。あとは、フォミラを見つけてマッドを倒すだけ」
思ったより冷静な綴を一瞥してから、私は城の中を見渡す。
城というよりも、牢獄みたいだ。辺りが真っ暗だし、壁も洞窟みたいに冷たくてゴツゴツしてる。
「そうですね。ですが、こういう場合は城の最上階に敵がいるというのはお約束です。行きましょう、最上階」
さゆみはそう言うと、バズーカを頭上に構えた。
…………は? 待って。さゆみまで頭悪くなっちゃった?
けど私のそんな心配は見事にフル無視された。
「スリー、トゥー、ワン!」
刹那、耳を塞いでても聞こえるほどの爆発音が私たちの頭上に鳴り響く。
ねえ、こいつらって、バカなの?
「活路、開きましたね」
「ああ。だが、この大きさの穴じゃ、せいぜい一人が限界だろう」
頭上の小さな穴を見てから、二人は私の方に目を向けた。二人だけじゃない。綴もだ。
あれ? 私の味方じゃないの? 綴。
「祭華、ごめん。わたしも、今回ばかりは作戦遂行を優先する」
申し訳なさそうに視線を逸らす綴。
それを見てる間に、先輩が「よし、じゃあ行くぞ」と私のことを軽々と担いだ。
何がしたいのか、何をするのか、これからどうなるのか、それが痛いほどわかる。
痛いほどというか、これから痛いんだろうな〜って。
「祭華、フォミラを頼んだぞ」
先輩の真剣な表情に、私もさっきまでのツッコミ疲れた表情をやめる。
今の私は、真剣モードだ。
「うん。じゃあ行ってくる」
その言葉を聞き入れてから、先輩は私をブンブンブン回した。
そして、ある程度遠心力をつけてから……。
「どりえやあああああああ!」
円盤投げの要領で、私のこと高く飛び上がらせた。
フォミラ、私が絶対助けに行くから……!
待ってろよクソ野郎! 絶対に殺してやるから!
「ふぃひひひ! ついに完成した! これで私は、私は……っ!」
「死ねやこの武器野郎!」
気合いたっぷりの罵声を上げながら、飛び回転タックルで天井を一つ、また一つと突き抜け、ようやく最上階までたどり着いた。
いったい……。そういえば私、今生身なの忘れてた。
「祭華ちゃん!」
「フォミラ! 今それ壊すから、待ってて!」
一日しか会ってないのに、どうしてだろうか。フォミラを見るのがすっごい久しぶりに感じる。
檻がなかったら、全力でフォミラを抱きしめてたと思う。
それだけ、フォミラが無事なのが嬉しかった。
所々に蹴られた跡や針の跡が目立つけど、元気だし大丈夫そうだ。
「……あなた、生きてたんですか?」
私が一時の安堵を堪能していると、例のクソ野郎、マッドが私の壊した瓦礫から姿を現す。その表情は、衝撃を我慢してるといった表情だ。
あそこまでの瓦礫を受けても、身体中にの機械はほぼ無傷。
やっぱり、あれくらいじゃ足りないか……。
「お前バカなの? あんなので私が死ぬわけないじゃん。だって、私魔法少女だよ?」
不敵な笑みを浮かべて、腰を低く構えた。
左腕を隠して。
「ふぃっ! 魔法少女? あなたのそのリング、壊れてるではないですか。そんなもので、どう私と戦うって言うのですか?」
煽るように、高笑いとともに訊ねてくるマッド。
その表情が歪むのには、そう時間はかからなかった。
私は勝ち誇ったような顔をして、隠していた左腕を前に突き出す。
「これで戦うんだよ!」
「…………なるほど。考え、ましたね」
苦虫を噛み潰したような表情のマッド。
黒鉄の腕輪。どれだけ大きな代償を払わないといけないのか、まだわからない。だけど、フォミラを助け出して、マッドを倒すために、私はやる。
転身、する!
私は左手を胸の前にかざす。
「アウェイク!」
そして、重ねたリングを力いっぱい振り払い、言い放った。
紫の炎が私を包み込み、身体中に纏わりついてくる。
全身から力が溢れ出る。
衝動が身体を駆け巡る。
私は戦いを求める。
心の底から。
『カレイド・ネクサス/ルナティック』
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