第5話
お母さんから連絡が来た時には、まだ火葬はされていなかったらしいけど、僕が家に着いた頃にはすでにサムは骨になってた。
家の仏壇にサムの骨は並んでいて、帰るなら僕はただひたすらに涙を流しながら、仏壇を離れることが出来なかった。
「けんちゃんのこと、しっかり見送ってから逝ったんだね。サムくんは優しいね、よく頑張ったよね」
お母さんの言葉に耳を傾けながら
「ありがとう、ありがとう、見ててね、頑張るからね、ありがとう」
そう何度も声に出しながらサムの骨に向けて言葉をかけ続けた。
いつまでもサムのそばにいたかったけれど、無理を言って寮を抜け出して来たこともあって、すぐに戻らなきゃいけなかった。
サムの骨を持って、みんなで庭へ行って、サムが穴を掘ってから実らなくなったみかんの木の下へサムをうえた。
みんなの声がたくさん届くようにって頭の骨を一番上にしてそっと土をかける。
土をかけるたびにサムとの毎日がすぐそばで蘇って、小さな体を引きずられながら歩いた日々が凄く愛おしく感じた。
最後の土をかける時みんなで「ありがとう」を伝えて夏の夜風に吹かれながら僕たちはその場を後にした。
それから毎年、サムが僕たちの元を去った8月15日に「ありがとう」とみかんの木の下へ言葉を口にする。
サムくん、僕はいま大人になったけれど、まだ色々なことに悩みながら生きてるよ。
でもね、これからきっと自分の道を見つけて頑張るからどうかいつまでも見守っていてね。
それじゃあまた、みかんの木の下へありがとうを伝えに行くね。
みかんの木の下へありがとうを 櫻井賢志郎 @kenshirooo
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