第4話通学路
僕たちが通っている高校は電車で30分程、下車して15分ぐらい歩くと海沿いの潮風に包まれた場所に校舎がある。
友人の智輝は自転車通学で途中から合流するのが日課だが最近なんとなくその時間、僕はぎこちなく感じている。
その理由は智輝に彼女ができたからだ。
智輝が誰と付き合おうと僕にはどうでもいいことだけど、あきらかに砂羽の智輝に対する態度が妙によそよそしく今までと違うのが気になる。
砂羽は智輝のことが好きなんだという紛れもない事実を認識してから、何も気づかず能天気な宗が智輝と彼女の雪菜(ゆきな)ちゃんを茶化している間に挟まれている僕は笑っているけれど内心は居心地が悪い。
「砂羽ちゃん、この二学期の数学ノートコピー頼む。」
一番の鈍感能天気なのは智輝かもしれない。
聞こえたようで聞こえてないような反応で砂羽は軽く首を縦にふる。
「智輝、雪菜ちゃんに頼めばいいだろう。」
思わず僕が言い返してしまった。
「バーカ、雪菜は一年だ。それに砂羽ちゃんのノートは見やすくてテスト対策されているから最高って、おい志音だってコピーどころかいつもテスト対策してもらっているくせにずるいんだよ。」
「バカていう奴が一番バカだね。」
やや悔し紛れに言い返しても笑って相手にもされない。
「おいおい君たち、はっきり言わせてもらうが砂羽のノートをコピーするには、まず宗様の許可が必要なんだよ。なあ砂羽。」
かわいくウィンクする宗に砂羽は一瞬、立ち止まると
「きもい。」
の一言と同時に笑顔の砂羽の横顔は綺麗だと僕は思う。
生まれた時から母と二人暮らしで祖父母や親戚にさえ会ったことがない僕には幼馴染の砂羽と宗のツインズ姉弟と中学校から知り合った智輝はかけがえのない大事な友だ。
今、この柔らかく流れている時間を大切にしたいと思っている。
父と母の間にもそういう時間があったんだろうか。
どんどん僕の中で父の存在が大きくなっているのを感じた。
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