サザンクロス

恋って一体何じゃろうなあ

　中西論理くん。

　同じクラスの彼のことを思うと私は胸が痛くなる。

　ついでに言うと、頭痛、発熱、目まい、せき、鼻づまりなどの諸症状も併発していた。

「それは恋というものでございます。お嬢様」

　そうなの？　じいや。

「不肖、このセバスチャン。お嬢様の恋を叶えましょうぞ」

　ありがとう。

　私、こんな風になったの初めてなの。

　＋

「あの。お弁当作って来たの」

　はあ。

　奇遇だな。俺も手作り弁当だ。

「一緒に食べない？」

　いや。施しは受けない。

　頼み事があるなら普通に言え。

　一応はクラスメイトだ。

　あーあ。

　面倒臭い。

　まあ、金持ちの馬鹿娘だから借金の申し込みではないだろう。

　ささやかな救いだ。

　＋

「セバスチャン」

　何か。

「何故、家の金でギャルゲとプレイスマッシャー５を買った」

　なのか様のためでございます。

「横領でクビだ」

　やれるものならやってみろ。

　若造。

　＋

「あのね。勉強教えて欲しい！」

　金持ちだろう。

　家庭教師を雇え。大学生の。

「ひどい！」

　何が。

「私がどうなってもいいの！？」

　はあ。

　そう言えば、女の家庭教師って聞かないな。

　あー。

　一応「女教師」カテゴリになるのか。えっちなビデオだ。

　駄目なのか。

　あー。

　塾に通え。

「庶民と同じ塾なんて！」

　じゃあ、この学校に来るのも駄目だろう。

　御剣なのか。

　変な奴だ。

　＋

　あのね。

「？」

　中西くんが超能力者だって噂は本当？

「げ」

　本当なんだ……。

　大丈夫。誰にも言わないよ。

「信用ならん」

　私、消されるの……？

　どんな能力なんだ。

「誰が言うか」

　あ。

　記憶を消す能力ではないのか。

　何なんだろう。

　教えて！

「あのさ」

　お願い。

「あー」

　お願い！

　好きなの！

「はあ」

　きゃー！

　言っちゃった！

「【ＢＯＯＫ】と【ＣＨＡＲＭ】」

　何それ。

「一度喰らった能力を３回まで使用出来る。遠隔攻撃や探り能力でも」

　え。

　能力コピー？

「ま、才能のない作家は逃げる逃げる」

　あの。

【ＣＨＡＲＭ】って？

「俺が知っている能力を１つ教えると戦闘は中止になる」

　え。

　それ。

　ずるくない？

「強いとは。ずるいと言うことだ」

　う。

　中西くん。お金なんか要らないのかな。

　私、超能力者になりたい！

　どうすればいいの？

「才能がない奴は無理」

　あの。

「別に。大した幸せでもない」

　はあ。

「厨二バトルか」

　何でそんな悲しそうな目をするの？

「一撃必殺の破壊力を持つ相手には無力」

　あの。

　この世界何なの。

「うるさい」

　あの。

「恋愛か」

　中西くん。

「俺は普通だよ。もっと強い能力者はいくらでも」

　そんな話をしたいんじゃないの。

　ねえ。

　異世界からの侵略者とかいる？

「神」

　はあ。

「まあ、この世界の最高神はフォルトゥーナさ」

　？

　良く分からない。

「アレだ。運命の出会いなんてない」

　あの。

「両親が歳を取ってからの子供なんだ。俺」

　あの。

「バイバイ。また風邪引くなよ」

　私はフラれたらしかった。