愛情

「アイちゃんはレンちゃんに似て可愛いわねぇ」

「ジョウ君にも似ていますよ」

「そうかねぇ・・・私は似ない方が良いとおもうけどねぇ」


 母さんは最近僕に辛辣でレンに非常に優しい。初孫がそんなに嬉しいのだろうか? まぁ結構待たせてしまったからな・・・。


「でもちゃんと出来て良かったわよ? 私は息子の種無しが原因だと思ってレンちゃんに悪いと思ってたから」

「ジョウ君は問題無いですよ。むしろ私の持病が原因の可能性がありますから」

「あらそうなの?」

「はい、今でも薬飲んで居るんですよ?」


 教えたら母さんの態度が変わってレンが余計なストレス感じてしまうだろうと思ってたんだよ。ストレスも不妊の大きな原因と言われて居るしな。


「この子は私に教えないなんて水臭いじゃないか」

「僕とレンの関係は問題無かったし、不妊治療の医者からも出来る可能性は高いと言われて居たんだよ」

「そうなのかい?」

「実際にアイが産まれているじゃないか」

「それにしては時間がかかったねぇ」

「それは授かりものだから良く分からないよ」

「まぁそうなんだけどねぇ・・・」


 結婚してからアイが産まれるまで9年の歳月がかかっていた。母さんに聞かれるたびにちゃんと妊活していると言っていたから、問題が無いにしてはかかったという印象なのだろう。


「そういえばアケミさんから最近連絡はある?」

「昨日も連絡ありましたよ、孫を抱きたいそうです」

「そうかい・・・あの人も大変だからねぇ」

「えぇ・・・」


 義母はあの遺産相続問題によって大事にしていた職場を人に譲り住処を変える事になってしまった、相手の男性の子供達が義母の店に入って大暴れして警察沙汰になってしまったからだ。代理人を通じ遺産の3分の4を受け取ったあとは各地を転々と暮らして居たらしく、3年前に落ち着いたと連絡があり安心していた所なのだ。


「四国から移ってはないんだろ?」

「みたいだよ」

「随分遠いねぇ・・・」

「こっちも落ち着いたら会いに行けば良いと思うよ」

「それもそうだね」


 僕達も暴れた男たちが何をしてくるか分からないので仕事を変えて引越しをしている。とはいえ義母程大きく離れた訳では無いけれど。

 アイが泣くのでオムツに鼻を付けて嗅ぐとお漏らしをした時の匂いがした。


「あっ・・・匂った・・・!おしめおしめ!」

「へぇ・・・手慣れたもんじゃない」

「レンと交代でお世話をしているからね」

「はぁ・・・うちの旦那と比べてマメだねぇ」

「父さんは僕の世話をしなかったの?」

「あの人は仕事一辺倒だったからねぇ・・・その分いっぱい残してくれたけど」

「そうなんだ・・・」


 確かに父さんと遊んで貰った記憶は殆どない。といってもレンと遊んでいたので他の人と遊ぶ事をあまり考えて居なかった。


「あの人のおかげで私も随分老後を楽させてもらって居るよ」

「老後というにはまだ若いだろ」

「もうすぐで還暦だよ」

「パートは続けられるんでしょ?」

「もう働かなくても問題無さそうだし退職するよ」

「急にボケたりしないでよ?」

「あぁ・・・それはあるかもね! その時は施設にでも入れとくれ!」

「ちゃんと世話するから気にしないで」

「息子になんか世話になりたくないよっ!」

「他人になら良いの?」

「あぁ・・・そうだねぇ・・・」

「ふーん・・・」


 母親としてのプライドだろうか? 別に母さんの世話をする事に抵抗なんか無いんだけど・・・。


「おしめ変えてくれたんだ」

「うん、少し下痢っぽかったね」

「産まれたばかりはそんなもんだよ」

「一応熱測っておく?」

「あぁ・・・取ってくるよ」

「どれ・・・うん大丈夫だよ」


 母さんはアイのおでこに自分のおでこをくっつけた。


「それで分かるんですか?」

「昔よくそれで熱測ってくれたよね」

「殆ど一人で子育てしてたしね」

「へぇ・・・」

「僕はちゃんと手伝うからね?」

「イクメンって奴かい? レンちゃん好きなだけこき使ってやりな」

「充分助かってますから」

「お手柔らかにね」


 その後母さんはレンに自分が僕を育てた頃の苦労話を散々したあと電車の時間だと言って帰っていった。


 そういえば母さんの背中ってあんなに小さかったっけ? 今度同居の話をレンと相談しようかな。

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