JOLENEジョリーン2・鬼屋は人を怨みます
尾駮アスマ
プロローグ
三重県 〇〇市 〇〇警察署、駐車場。
世の中、誤解、ありますよ・・・えぇ・・・
仕方ない状況、誤認逮捕・・・結構あるんですよ、みなさん。
え?私ですか、はじめまして
名前、本当は
自分では、あまり気に入っておりません。
おどろおどろしい感じがしますし
幼少の頃はひっくり返して『だるま』とからかわれ
嫌な思い出もあります。
さて、みんなで静華さんの父上・城一郎様の愛車
1970年代トヨタ・セリカ
通行人が振り返るほどゴツくて綺麗なフォルムの車です。
「なぁーんだってマルダわぁ、チョット買い物に
長い髪の静華さんが変顔で詰め寄ってきました・・・ちょっとドキドキ・・・いい匂いが漂ってきました。
美女に怒られるのは悪い気がしません、まるで綺麗な母にお説教食らっている気持ちになります・・・
「クス、クス、クスッ・・・」後部座席で和華さんが笑っています。
「スイマセン・・・もう何がなんだか・・・巻き込まれました」
「でさ、その行方不明の女の子、萌ちゃんの居場所見つけたから私達だけで今から救出に行くわよ」
「えっー!さっきの今で、もう見つかったんですかぁーっ!」
車のキーを差し込みながら静華さんが言います。
「フン!なめるんじゃないわよっ!」スターターが回転。
ニコニコと腕を組み鼻息荒い、かわいい和華さんも真似しました。
「じゃないわよっ!フンッ!」
静華さんと和華さんには誰もかないません。
彼女達、ものすごい人脈と一族・サポーターが居ます。
国の方々でもトップクラスばかり、なんでも
呼ばれる方々なんだそうです・・・
ふと後部座席を見やると光の玉が和華さんの隣に見えました。
『アラッ、城一郎さまも、いらっしゃったのですね・・・』
光の玉、城一郎さまは静華さんの、お父上で守護霊さまです。
最近、
幽霊の声もダイレクトに聞こえるようになりました。
そして車に乗り込まないと外からは解らないのですが天井には真剣の日本刀・通称『
普通は違法なので捕まります、警察に・・・ま、その話は追々ということで・・・
静香さんの愛車は珍しい旧車でしたので、警察官も
それとも車高も低めの改造車なので検挙する相談でもしているのでしょうか・・・
どういうつもりか静華さん、車のエンジンがかかると
いきなり、ふかし始めました。
警察署の駐車場内で明らかな挑発行為・・・
―ボボボボ ボオウン!ボオウン!ボオオオウンッ!
60φマフラーが低く重いサウンドを奏で始めました。
『警察官たちが、こちらを見つめています。
・・・っていうか明らかに
「静華さんっ!」
私の問い掛けに静華さんは含み笑いで何も答えてくれません。
「・・・・・・フッ」
唇の右端がグイッと上がっています。
『あーあ、そんな、お顔も綺麗です・・・まいったな・・・』
エンジン・マフラーの咆哮が警察署に響き渡ります。
―ボオウン!ボウンボオオウン!
「ねぇ、静華さんってば!警官の方々が睨みつけてますって
マズイですよ・・・ちょっと静華さんっ!」
私の心配など完全無視されました。
「和華っ!歩行者大丈夫?」
「ハイ、お姉様、誰もいません」和華さんの遠隔透視です。
「よぉーーーしっ」静華さんがシートベルトをして指をボキボキ鳴らしました。
「チョットッ!何始めるんすかっ?」
「先週、クラッチ吹っ飛ばしちゃってアハハッ!壊れたの修理完了っ!ウフッ!」
「ウフじゃないでしょっ!あーあーーおまわりさんコッチきますよーっ」
警察官が二人、こちらに向かって歩いてきました。
マフラーが激しい咆哮を上げました。
―ボオウン!ボウンボオオウン!ボウオン!
グンッとギアがセコンドに入れられました。
「いくわよっ!3500GTッ!」
「え?」
『2000じゃなかったっけコレ?』
温まったエンジン全開で、そんなの知ったコッチャない
修理完了の強化クラッチがガツンッと繋がりました。
ぶっとい後輪タイヤが大きな悲鳴を上げて駐車場から車が飛び出しました。
―ドッ!ギャギャギャギャーーーキャアーーーーッ!ボオウウン!
振り返って後部座席にニヤニヤと座る和華さんの肩越しに
警察署を見ると何人もの警察官たちが、あたふた大騒ぎして
次々パトカーに乗り込むのが見えました。
―ピュウゥッ・ピュ・ウゥウウーウウウウーーーー・・・
回転パトランプが点灯し大きなサイレンを鳴らして追いかけてきました。
マフラーの轟音と共にセリカ3500GT改は、
あっという間にグーンと加速、あっさり100キロは出てます。
―バーーーーン!
「チョチョチョチョォーッ!しずかさんっ!パトカー来てますよ何台もっチョ、しずかさんってばぁーっ!」
後部座席のお嬢様、和華さんが叫びます。
「マルダおじさんっ!」
「チョチョチョーッ・・・ん?あエッ?」
「うるさいっ!!」
「・・・」
小学生に・・・怒られました・・・
しょんぼりしていると
ノイズ音が聞こえてきて、榊原一族・四天王の一人、
榊原城一郎様(守護霊)がテレパシーで話しかけてきました。
「静華がやんちゃで、すいませんマルダさん、まったく、
この娘は一体誰の血を受け継いだんだか・・・」
振り返り、わたくしシキ、言わせて頂きます。
「っていうか、あんたでしょっ!」
「ほうおーアンタと来ましたか、なんだかマルダさんも言うようになりましたなぁーふぅおーん、そうですか」
城一郎様を視ると遠くを見るような表情です。
「だってそうでしょ、街中を、国道を、こんなスピード出して
後ろ見てくださいよ!パトカーあんなにイッパイどうすんですかっ!
今から女の子救出に行くんでしょ?まったく・・・」
サイレンを鳴らしパトライト全開で数台のパトカーが
必死に追ってきます。
静華さんが口を開きました。
「アハハ、いいからちゃんとシートベルトして掴まってなさい」
ふと、前から気になっていたことを私は聞きました、
時速100キロですが・・・
「あのーこのボンネットの上にある郵便受けみたいなのコレ何です?」
「ウフッ、スーパーチャージャーの吸気口、お楽しみよ!」
「ハアァーーーッ?飛行機でもあるまいし、すぅぱぁーちゃーじゃぁあーだあーーー?何やってんすかっ!」
「アハハッ!」
「で、今どこに向かってるんですか」
「山の麓にある廃ホテル、早く行きたいの萌ちゃんが泣いてるわ」
ついで城一郎様が言います
「私が見つけました、褒めてもらっても良いんですよマルダ君」
すると静華さんが運転しながら電話をかけ始めました。
「あーダメですよ運転中に、事故ったら死にますよぉー」
「あーあーん大丈夫、
あっ、もしもーし、
どうもぉー、緊急事態で、お願いありますぅー、
いま三重県でパトカーの追跡うけてるんですけどぉー、
付いてきてもいいのでサイレンとパトライト消してついてくるように所轄に大至急命令出して頂きたいのですがァー・・・
それが、誘拐事件の犯人逮捕、少女救出ですぅー・・・
ハイ、じゃよろしくでーす、またねーエイちゃんっ!」
タイガとは妙な縁で榊原一族に
綺麗なハンドルさばきの静華さんです。
「今の電話の相手誰なんです?」
「あー警視総監の大田原さんよ、じゃ急ぐわよ」
『はぁ・・・ってオイッ!総監ってなんだよ』
なにやら操作スイッチ入れてます。
―シュコッ!シューーーキィーーーーーーーン
「なにしてるんすか・・・」
「アハハッ!」
城一郎様が言います
「マルダくん、何かにつかまりなさい」
聞いたことのない音がします。
「じゃ、いくわよぉーーーー」
静華さんがガチャリとレバーを引くと一瞬、車体がグラリと揺れてスーパーチャージャー走行に切り替わりました。
―シュコーーーーッ 吸気音です。
―キィイイイイーーーーーーン・・・
スピードが120キロ・・・150キロ・・・180キロ・・・
ものすごい加速で体にGがかかります。
「うわ・うわ・うわ・うわーーーーぁーあーーーーーっ!」
私は足をツッパリ何かに掴まって悲鳴を上げると、みんなが叫びました。
「マルダァ!!」
「あーーっん?ウェーえ?・・」
「うるさいっ!!」
少女救出のため猛スピードでスーパーセリカが
夜の国道を突っ走り、猛然とパトカーの群れが
追いかけていきました・・・
追跡をしているパトカーに無線連絡。
「・・・と判明しました、暴走車両ナンバー0314
白のセリカ2000GT。
追跡中の車両は至急、サイレンとパトライトの停止願います、
追跡は、そのまま続行ですが速度を落としてください。
目的地指示が出ますので制限速度で待機走行ねがいます。
繰り返します。
警視庁より入電。
現在、各パトカーが追跡中の暴走車両は警視庁特使・
特命・国家公務員が運転しています。
誘拐犯検挙と事件の人質救出を目的に向かっている緊急車両と判明いたしました、ナンバー0314・・・・」
一般の目撃者は暴走族を追跡するパトカー集団だと誰もが思いました。
JOLENEジョリーン2・鬼屋は人を怨みます 尾駮アスマ @asumao888
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