9
揺り動かされて目覚めた私に、たったいまぽん太が亡くなったらしいと母親が沈んだ声で告げた。
私はひと呼吸目を閉じてからうなずき、起き上がってベッドから降りる。
「大丈夫なの、真由」
母が私の肩に手を掛け心配そうに聞いた。
私はもう一度うなずき、ベッドの端に脱ぎ捨てていた薄紅色のダウンコートを羽織った。
いつのまにか太陽は西に傾いていた。
動物病院に着くとすぐに診察室に呼ばれ、あのメガネをかけた先生が母親と私に深々と頭を下げた。そして私に小さな白い箱を差し出し、その蓋を静かに開けた。
中には呼吸を止めたぽん太が艶やかな白い布の上に横たわっていた。またぽん太の体のそばには可憐な色の花びらが何枚か散りばめられていて、その様子はまるで小さなお花畑にぽん太が寝ているみたいだった。
泣くまいと決めていたはずなのに、やはりそれを見ると瞬く間に大粒の涙が目蓋から溢れ出した。
私は嗚咽とともに声を絞り出した。
「ぽん太、ごめんね。でも……まゆも……楽しかったよ」
そう伝えるのが精一杯だった。
それから私は無理やり頬を緩めた。
ぽん太のために私は笑っていなければならない。
約束を守りたかった。
その一心で私はぎこちなく微笑んだ。
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