6
私は右足の裏に柔らかなものを踏む感触を覚えた。
「えっ……」
つんのめって緊急停止した私は通り過ぎた数歩前の床を見下ろす。
そこに白いタオルが落ちていた。
たぶん母が畳んだ洗濯物を置き忘れたのだろう。
それは床のタイルとほとんど同じ色をしていた。
目を凝らすとタオルの中央部分に小さな膨らみがある。
私の胸に不吉な動揺が広がった。
まさか。
鼓動が一気に跳ね上がった。
そして恐るおそるタオルを捲るとまさにそのまさかだった。
そこでぽん太がお腹から血を流して倒れていた。
私は目を見開き、悲鳴を上げた。
いや、実際には悲鳴を上げることすらできず、喉をひくつかせてその場に立ち尽くしていたように思う。
あまりよく憶えていないのだ。
記憶に残っているのは動かなくなったぽん太を両手で包んで胸に押し付けていたこと。
いつのまにか母が帰ってきて、せつかれる様に車に乗せられたこと。
そして手の中のぽん太の体温が少しずつ下がっていくのが感じられたこと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます