第19話 ようこそアイギスへ(アイギス攻防戦 前編)

 オリバーとの会談が予定通り破綻したので、予定通りにアイギスは攻められる事になった。


 会談の翌日、王の軍から雄叫びが上がり、対岸に陣どった敵が破城槌を先頭に突っ込んでくる。


「始まりまったな」

 僕がつぶやくと、隣りにいるフランクが愉快そうに言う。

「さて、お手並み拝見」

 語尾に音符がつきそうな気がしたが気のせいだろ。

 

 はじめは弓矢打ち合いになるのだが、向こうからの弓は魔法の言葉お陰で当たらない。こっちの弓はバスバス当たるので敵は中々近づけない。

 魔法使いが近づこうとするが、魔法を唱える前にゴードン特性のクロスボウでぶち抜かれていた。


「すげーな」

 僕が感嘆の声を上げると、フランクが

「並のクロスボウより3倍は威力がありますからね。のんびりと魔法を唱えるとああなりますよ」

 と答える。

「狙われたくないな」

「同感です」

 互いに顔を見合わせて肩を竦めた。


 この日はそのまま終わった。


 次の日も同じような戦闘が続いた。ただこちらかの攻撃が少々弱くなってるような気がする。

 それのことをフランクに聞くと

「ああ、休憩させてますよ」

 ことなげもなく言ってた。


 そのせいか、門にとりつく敵の数が少しづつ増えてくる。


「大丈夫?」

 僕がフランクに聞くと、

「計画通りですよ」

 と彼は笑った。


 その日はそのまま終わった。そしてその夜に敵に異変が起こった。


「おお、火があがってますな~」

 フランクが楽しそうにいう。

「おお、リキャルドさんが上手く食料に火をつけてくれましたね」

 と僕がいうと

「なかなかどうして、いい手際ですな。流石北部で生き残ってる人達ですなぁ」

 とフランクが感心していた。


「そうそう、ドノバンからの情報によると彼らの食料はそんなにないので、明日から気合入れて攻撃してくると思います」

「わかりました。では、我々も準備するとしましょう」 

 

 そういうと、僕は敵に視線を向けた。夜は更けていった。


 三日目になると、こちらの攻撃がますます減り、敵がどんどんと門にとりつき、しまいには破城槌が門にとりつく。

 破城槌が門にとりついた瞬間に、わが軍の攻撃が破城槌に集中する。

 油をぶっかけたあと、火矢を放ち燃やそうとするが、敵も水をかけて消火しながら門への攻撃を続ける。


 何度かの攻撃の後に、門が破られた。と、その同時に破城槌を破壊した。


 歓声とともに、敵が城内雪崩れ込んでくる。目の前にはアイギスの街があり、敵の抵抗を排除すればこの戦いは終わりだと思っただろう。


「でも違うんだけどね」


 門が破壊されると同時に、わが軍からの攻撃が止む。敵がわが領内から略奪を始めてる。しかし、『第一の街』には少々、ではなくかなりの細工をしていたりするんだけどね。


 

 その次の日、王がアイギスに入場してくるそうな。仰々しい兵士の移動があれば、まるわかりだ。歓迎をしてあげないとね。


 近衛兵やらお付きの人がが王を取り囲んでる。そして、オリバー・ミュラーが堂々と入場してきた。


 それを僕は第一の街と第二の街の間にある門の上から見ていた。入場して彼らが盛り上がってるところを見て、声を上げた。


「ようこそ! アイギスへ!」


 その声は魔法の力(エルフィー特性の風魔法を利用した拡声器のようなもの)でアイギス中に響き渡った。

 オリバー達の顔がこっちを向く。


 そして、天を覆う弓矢がオリバー達に襲い掛かった。


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