第20話 損切りできるかな?(アイギス攻防戦 中編)

 オリバーにめがけて弓矢の雨が降り注ぐ。近くの兵士たちが盾を上げ懸命に弓を防いでるが、盾と盾の間から矢が飛び込み、何人かが倒れる。だが大きく崩れることはない。


 本当に統制が取れている。流石、王の軍といったところか。


 などと思ってると、我軍から槍が投げ込まれた。


 同じように盾で防いだが、いくつかは盾に刺さる。そして、その盾は持ち上がらずにいると、そこに弓矢が降り注ぐ。その兵士はハリネズミなった。


 玉ねぎの皮を剥ぐがごとく、少しづつ兵士が倒れていく。

 近衛兵の指揮官らしき人が下がるように命じているらしいが、門の外から次々と兵士が入ってくるため上手くは行ってない。


 このままではと思ったのか、その指揮官は部隊をまとめると、第二の街に通ずる門に向かって(つまり僕のいるところ)走り出した。


「そうきたか」


 僕がつぶやく。ちなみにこの門な幅は3メートルくらいで、頑丈な鉄で出来ており、裏には重量物をびっしりとひきつめている。


 その指揮官が門に取り付き、残りの兵士もそれに続いたころ、フランクの号令とともに、上からとある液体が降り注いだ。


 ぎゃぁという叫び声とともに液体を浴びた兵士が転げ回る。何人かは免れたが殆どの人間が浴びたようだ。そして浴びた人間はほぼほぼ動けなくなっていた。

「煮えたぎったお湯はこうも効くんですな」

 とはフランク。

「僕もここまで効くとは思ってなかったよ」

 そう言うと肩を竦めた。


 敵の指揮官が何かを悟ったのか撤退を初めた。王も撤退したようだ。



 第一の街は制限してる事がいくつかある。

 まずは定住を認めていない。そして土地や建物のの所持も認めてない。私物を長期間置くことも認めてない。


 つまり、ここにあるやつは全部公共物になるため、トラップ置き放題になる。


「敵さん、喜んで略奪してましたよ」

 と、フランク

「まぁ、そうなるよね」

「敵さん、食料事情がかなり悪いらしいです。この地から徴発しようとしたら、そもそも住民がいなくて、あまり徴発できずに困ってるそうですよ」

「まぁ結構買い上げたからなぁ」

 どす黒い何かをあまり隠さずにいると、フランクが苦笑しながら

「いやはや、怖いお方だ」

 と呟いた。

 失敬な。僕は善良だぞ。とは反論しなかった。


「しかしまぁ、奇妙な籠城ですね」

「そうだね。普通、籠城って防御側が周りをぐるっと取り囲まれて、補給を絶たれて、援軍待ちか時間切れを狙うってかんじだからなぁ」

「しかし、今の状況は我々の方は簡単に補給が受けられますが、敵さんは補給もままならない状態です」

「そうだね」

「撤退しますかね?」

「どうだろう。なまじっか第一の門を突破してしまったため、落城は時間の問題とか思ったんじゃないかな。多分、王都にお知らせがいってると思うよ」

「そうですかね」

「北部平定戦の失敗もあいまって、これが失敗したら王の威厳がなくなるかもだからね。そりゃ必死だよ」

 まぁ、少しは同情してみる。


「もし、公主様が王の立場だったらどうします?」

「とっとと撤退するよ」

 そういうと僕は肩をすくめる。

「まぁ、それしかないですよね・・・・」

 と、フランクが気の毒そうに言った。


「さて、損切りできるかね」


 そろそろ寒くなる。早く決めないと大変だぞ。と口の中でつぶやいた。


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仕事がデスマーチに突入しました。がんばりますw

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