第17話 下準備

 10月に入ろうかという頃、ポルコからの連絡で、王の直属軍がこっちに向けて出発したらしい。

 行軍には時間がかかるので、到着は11月といったところになりそうだとはフランクの話。


「やれることをやりましょうか」


 我が領の近くにいる王領の住民から、食料を3倍の値段で買い付ける。そして理由を説明してこの冬の間は逃げるように言っておいた。戦役があったばかりなので察したのか、大多数は旅行に出かけたそうな。うん、いいことをした。


 また、工作も怠らない。

『ステファニー嬢は本当は〇〇様をお慕いしている。しかし、この国の事を考えて王と結婚した。毎夜毎夜、窓の外を眺めながら〇〇様を想っているのだ』

 とかいう噂をながす。

 また、

『ラーション家もキーガン家も反乱を起こした田舎公爵を討伐することはできなかった。もし仮に王が失敗したとなったら、北部平定戦の失敗も合わせて、頼りになる方は王弟ただ一人となる。王にはご退場いただいて、王弟を王として祭り上げたほうが良いのではないだろか』

 とかいう噂も流してもらう。

 トドメに王弟に金を流してもらい王がアイギス攻略に手こずるようであれば、なんて空気を作っておく。


 とまぁ、偉そうな事を言ってるが、この辺りの工作はドノバンとポルコに丸投げだったりする。できる部下には丸投げする。これが統治者の手腕って奴よ。

 とドヤってみる。


 粛々と準備を続けてると、11月になった。

 少しずつ寒くなってきている。こりゃ今年は冷えこみそうだなと思ってると、

「先ぶれがきた?」

「はい、使者が来てます」

「なんでまた」

「さぁ、私に言われても」

「だよね。すまん」


 仕方なく使者とやらにあってみる。どうやら話し合いがしたいとのこと。

「今更何を話すんだ?」

 とか言うのをオブラート100枚くらいに包んで話すと、

「うるせー、王が会いたいって言ってんだから会えや」

 と言う返事がオブラート10枚に包まれて帰って来た。

「わかりました、お会いしましょ」

 と言って、場所を橋の上に指定した。わざわざ場内にいれることはない。

「流石にそれは失礼では」

とか

「これだらか田舎者は」

とか言ってたが、全部無視した。


 その後、デモンズにお願いして、橋の上に会談用の天幕を設営してもらった。


「今さら何を話すんですかね」

 と、デモンズ

「国を割らないために降伏しろとかそんな話だろ」

 と僕が吐き捨てるように言う。

「従うんですか?」

「冗談。誰が従うか」

「しかし、あの国王はなかなかいい統治者と聞きますが」

 デモンズが僕の顔をチラッとみる。

「デモンズさん。僕と国王、どっちに仕えるのが良いですか?」

「そりゃぁ断然坊ちゃんですな」

 太鼓判を押してくれたが、

「理由を聞いても?」

「こんなイジりがいのある当主はなかなかいませんからなぁ」

 デモンズがニヤリと笑った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る