第11話 なにそれカッコいい

 平原に一万弱の我が領の軍隊と、サム家とキーガン家を合わせた一万三千の軍隊が相対していた。


 討伐軍と銘打った王国軍は赤の騎兵隊と、青の歩兵隊と、紫の魔法隊で構成されている。

 翻って我軍は黒やら茶色やら緑で構成されており、とても強そうには見えなかった。


 討伐軍から騎士が使者の意を伝える旗を持ちながら、我が軍に近づく。さて、何を言うのかな。


「聞けー!貴様らの領主、ロイス殿はすでに王国への反意を自白した。王の温情でロイス殿の命と差し替えに貴様らの命を保証する事になった。今すぐ武器を捨て、投降せよ。さもなくばここに屍をさらすことになろう!」


 僕が囚われたままだったら物凄く有効だったろうな、とか思ってると、そこかしからクスクスと笑い声が聞こえ、そう時間もかからずその声は爆笑に変わった。

「何いってんだ?」

「公主様はすでにいるぞ」

「公主様はそんなに立派じゃない」

 何か不穏な言葉は聞こえたが、無視しよう。


「反乱起こしたところでなんかいいことあるんか、って言いそうだよな」

「あの公主様がそんな面倒なことをするはず無い」

 みんな、僕のことを理解してくれてる。僕は嬉しいよ。

 頬に伝った水は嬉し涙としておこう。


 笑い声が収まる頃、向こうの本部らしきところが何やら騒がしくなる。そして幾人かが僕を指さした。どうやら逃げ出したことがようやく伝わったらしい。


 使者の騎士殿が慌てて引き換えした。


「公主様、お言葉を」

 フランクに言われて、一歩前に出る。視線が集中する。

「みんな」

 ひと呼吸

「勝つぞ!」

 そう言うと、右手をあげる。

 一瞬の静寂後、歓声が地の底から湧き上がった。


 盛り上がった歓声が収まったころ、ゴードン達ドワーフが、持ってるハルバードの柄を地面を一定のリズムで打ち付ける。そして歌いだした。

 その歌は、勇壮でここにズシンときた。戦う前に歌うには最適な曲のように思える。


ーなにそれかっこいいー


 1万人近い兵士たちが勇壮な曲を歌うさまは圧巻であった。しかし、僕が領にいたころはこんな歌はしらない。

 こちら側では僕だけが知らずにただただ立っていた。


 あとから聞いたのだが、この歌はゴードン達ドワーフ族が戦いの前に、自らの神に捧げるための歌なのだとか。

 演習のするたびに歌っていたので、いつの間にか覚えてしまい、最後のほうはみんなで合唱するようになったとか。


 僕が王都で囚われてる間にこんなことになってたのか。

 なんかしゃくぜんとしない気持ちを抱える。これは奴らにぶつけることにしようと思うことにした。


 ドーンドーンと音が鳴り、喚声があがる。どうやら始まったみたいだ。


ーたのむぞー

 

 そういって、僕は戦場を凝視した。

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デスマーチに突入しました。がんばります。

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