第10話 戦の前
王都からの脱出してから数日後、僕は戦場にいた。
コウベに到着した瞬間に電車に放り込まれ、領都経由でアイギスまで運ばれ、息つく暇もなく馬に乗せられて、ここまで走らされた。
馬も替え馬を用意して、一晩中走らされた。
日が昇ることに、ようやく到着した。馬を降りると同時に、天幕が貼ってある本部に転がり込む。
「間に合いましたな」
本部にいたフランクが半笑いで迎えてくれた。
「もう少し加減ってものをですね・・・」
「そんなことはあちらさんに言ってください」
フランクが虚空を指さして言う。まぁ実際その通りなのでぐうの音も出なくなる。
「さて、お疲れのところ悪いのですが、陣中回りをしますので、付き合ってください」
「え?」
恐ろしく間抜けな声が口からでた。しかし、フランクが有無も言わさず天幕から外
にでると
「行きますよ」
といって、陣中回りに僕を引っ張りまわした。
「いや、だからですね。あなたは僕の部下でして」
という抗議は虚しく宙に消え、問答無用で連れまわされる。
行く先々で色々といじられたのはいいのか悪いのか。
その後に軽く打ち合わせを行い眠りについた。決戦は明日だ。
次の日、未明から移動が始まった。足元を照らすライトをもとに、ゾロゾロと移動を始める。
「便利ですね」
「まぁ、火を使うよりよいですからね」
とはフランク。
このライトの魔道具は一般的なもので、かなりの数が出回ってた。
「それにしても、なんでまたこんなに?」
馬車の荷台に乗ってる箱には、その魔道具が山と積まれていた。
「なに、使い道は色々とあるのですよ」
フランクがそういうと微笑んでいた。コワイコワイ。
日が昇るころに想定した戦場に到着する。
ここは平原が広がっており、大軍がぶつかるにはおあつらえ向きな地形だった。
「決戦はここか」
そんなことを言って感慨にふけってたら、有無も言わさず着替えさせられて、なぜかとんでもなく派手な衣装に着替えさせられた。
「なにこれ」
「まぁ、撒き餌といいますかなんといいますか」
フランクが顔のニタニタしてる。
「撒き餌ってなに?」
「撒き餌は撒き餌ですよ」
「仮にも主に向かってですね」
「適材適所ですよ。よく言ってるじゃないですか」
そういうと持ち場に戻っていく。
仕方ないので、そのまま立ってると、ゴードンの声が聞こえた。その方向を見ると、真っ黒な円筒に頭と手足が生えた物体がいた。
「ゴードンさんですか?」
「おお、そうだ」
「なんですか?」
「我々、ドワーフ族の技術の粋を集めて作った鎧だ」
その鎧は、文字通り全身をくまなく覆い、空いてる場所がなかった。それにしては動作がかなりのスムーズなので、我々にはわからない技術が使われているのだろう。
「前は見えるんですか?」
「問題ないぞ」
とのことだった。こっちの声にも反応してるし、ゴードンの声も聞こえるので物凄い技術が使われてるのがわかった。
「まぁ、みてろって」
そういうとゴードンは持ち場に走っていった。あの格好で普通に動けているのは、やっぱりドワーフの技術はすごいと感じた。
ちなみに、エルフィーたちのエルフ族は革鎧(のようにみえる)と弓矢という装備、ギドたちは胸当て、手甲、足甲といった部分部分を守るような装備をつけている。
僕の領の軍は、全身鎧と大楯をもった歩兵と、北部平定戦で使った鎧をつけた歩兵の二通りがいた。装備が滅多なので、あんまりいいたがないが、強そうに見えない。
フランクがそばに寄ってくる。
「始まりますよ」
その言葉が僕の耳をくすぐった。
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がんばります。
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