第9話 あんまり緊迫しない脱出

 王都から無事脱出できた。

 門番に止められるかと思ったが、身分証の提示を求められたのはエルフィーだけで、僕は何故かスルーされた。門番の目が哀しそうだったのは気のせいなのか。

 なんて言ったのか聞いたらこれまたスルーされた。まぁ出られたからいいか。


 港町の近くまでの道のりを急ぐ。

 特に面倒なこともなく、というより嫌な感じを徹底的にさけたため、予定通り2日でたどり着く事ができた。


「ここは?」

 エルフィーが聞いてくる。

「元漁村です。廃れて誰もいませんがね」

「何でこんなところに?」

「お迎えが来てくれるんですよ。港に行くと色々と目がありますから、ここからでてもらいます」

 そういうと。

「本当に準備はいいなぁ」

 とほめてくれた。

「お褒めにあずかり光栄です」

 完璧な貴族の礼をする。

「坊主、おまえ、やっぱり貴族だったんだな」

 エルフィーが感心したようにつぶやく。

 つーかやっぱりってなんだ、やっぱりって。


 海岸のほうへ向かっててれてれと歩くと、

「坊主!」

 真っ黒に日焼けしているクレスが手を挙げた。

「クレスさん。自らですか?」

「おう、来てやったぜ。感謝しろよ」

 そういうと僕の背中をバシバシ叩く。痛いわ。

「ありがとうございます。では、とっとと逃げましょう」

「追手がきてるのか?」

「来てないですが、こういうのは急ぐに限ります」

「そりゃそうだ」

 クレスはガハハと笑うと、海岸にある漁船のような小さな船に乗り込んだ。


「さて、行くぞ」

 浜辺から船をを押し出し、大海原へ漕ぎ出す。沖合に停泊している大型船に乗り込むためだ。


「ところで、クレスさん」

「うん?なんだ?」

「僕は公爵ですよね」

「そうだな」

「あなたは一応僕の部下になりますよね」

「そうだな」

「僕が船をこいでるのは何でですか?」

 クレスが舳先に立ち、なぜか僕がオールを使い、エルフィーがその後ろで舵を担当している。

「そりゃ適材適所ってやつだな。俺は海がわかるから進路を決める。エルフィー殿は繊細だから俺の指示に的確に答えてくれる。そしたら坊主がオールを握る」

「はぁ」

 絶対違う。

「適材適所。坊主もよく言ってるだろ」

 クレスがガハハハと笑う。

「いやいやいやいや」

 なにか文句を言いかけたが、

「口を動かす前に手を動かせ」

 とエルフィーがしてきたので、へいへいと手を動かす。


 しばらくえっちらおっちら船をこいでると、どでかい帆船と合流する。この帆船でコウベまで移動することになる。


「やれやれ。ようやくだな」

 久々に当たる外の風に身を任せながら、背筋を伸ばした。

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次回からようやく派手になります。頑張ります。

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