第8話 こっそり
高い塔の部屋に閉じ込められてる。
「おとーさま、おかーさま。元気でいて下さい」
窓から指す月明かりが僕に残された唯一の希望だった。
「みんな。どうか元気で」
そう言うと僕はゆっくりと目を閉じた。
「何を遊んでる?」
エルフィが呆れながら声を掛ける。
「囚われの王子ごっこです」
「坊主が王子ってタマか、王子はイケメンと相場が決まってるんだ」
「僕がイケメンではないと?」
「3年間声をかけてもらわなかったお前が何を言うとるのだ?」
「ひどい、そんな本当のこといわないでください」
サメザメと泣いてると、頭をひっぱたかれた。
「ほれ、とっとと出るんだろ。行くぞ」
痛い
「へーい」
もうちょい浸っていたかったんだけどなぁ。
そして、ひそかに持ち込んだ無限袋から人形を取り出だす。重量と大きさを無視して格納できるものだ。
その人形をベットに寝かせて、上に布団をかぶせる。そのあと、頭にウィッグ(?)を乗せて、ぱっと見寝てるように見せる。
これでいくらか騙せるだろう。
「ところで、正面からはいってきたんですか?」
「わるいか?」
「見つからなかったんですか?」
「精霊のおかげでね。人間相手に認識させないなんて造作もないことよ」
そういうと片目をつぶった。
光学迷彩かな。さすが精霊使い。
「さて、でるぞ」
エルフィーがそう言いながら窓を開ける。
「え?玄関からじゃないですか?」
「ばかもの。若人は苦労するものだ」
というや否や僕の襟首をつかみ、窓の外に放り投げる。
「嘘だろ!」
そういう間も無く身体が宙に浮かぶ。
10メートルはあろうかという空間に放り出され、そして、重力に逆らうことなく地面と急接近する。
急接近するなら美人なおねーちゃんの方がいい、とか恐ろしくどうでもいいことを思いながら、なんとか着陸体制を取ろうとすると、体がふわっと浮かぶ。
「ああ、よかった」
どうやらエルフィーが魔法で何とかしてくれたらしい。さすが精霊使い。
「どうだ、びっくりしたか?」
エルフィーがウィンクしながらふわりと僕の隣に降りてくる。
「ええ、物凄く」
「それはよかった。やはり若人は苦労しないとな」
それは苦労とはいわない。と言いたかったが、言うと何か変なことされそうなので黙っておくことにする。
「さて、行きますか」
「ちょっと待ってろ」
そういうと何やら魔法をかける。そして僕とエルフィーから音が消えた。
ー音を消す魔法ってやつか。すげーなー
事前に準備しておいた穴を通って、王宮から脱出した。
「さて、いきますか」
魔法の効果が切れたのをみて、僕は南に向かう。
「あれ、そっちなのか?」
「はい、ここからの陸路は、多分封鎖されてると思うので、南の港から船をつかってコウベまで行きます」
そこまでいうと、エルフィーがまじまじと僕の顔をみて
「本当に坊主の能力はすごいな」
と感心してくれた。
ーまともなごはんが食べたいなー
そんな場違いなことを思いながら、港町の近辺まで向かった。
夜の王都はとても静かだった。
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次からは派手(?)になります。イイネ、コメント、お願いしたいです。
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