第5話 散策

 会見の翌日はお休みにした。宿でゴロゴロしている。

 通常の貴族なら王都に別邸を持ってるものだが、僕のお祖父さんの代で辞めたらしい。何でも田舎者の公爵家と馬鹿にされたので引き上げたらしい。まぁそれだけじゃないだろうけどね。


 ポルコが部屋に入って来るや否や

「坊ちゃん。若人が家でゴロゴロしてるなんて、不健康ですぞ。よい為政者とはこういうときほど積極的に外にでて交流を図るものです」 

 と言ってきた。

「いや、休ませてください」

「なにを弱音を吐いてるのですか。王都を見て回るよい機会ではないですか」

「若者だからといってもですね・・・」

「ほらほら、少しは外にでてください。掃除ができませんよ」

 そっちが本音か

「仮にも商売相手の公主にむかってですね」

 と言おうと思ったが、ハイハイと言われて部屋を追い出されてしまった。


 仕方ないので街をぶらつくことにする。

 護衛とか必要では、と言ったら

 「坊ちゃんなら大丈夫ですよ。なんたってあの旦那様と奥様のお子さんですからね」

 と笑って送り出された。


 普通の公爵家の当主なら護衛をゾロゾロ引き連れていくのが普通なのだろけど、僕は母上とギドに鍛えられたのと、スキルのおかげで結構ほっとかれている。

 威厳とかそういうのは地に落ちるがいいのか?と聞いたことあるが、いまさら何をいってるんですか、と部下に言われてしまった。いいのかわるいのか。


 王都はそれぞれ貴族街と商人街に分かれている。正確には貴族街となのだが、そう言うと色々とまずいためこういう呼称になっている。


 貴族街の中にも宿がある。

 貴族街で別邸をもてるのは伯爵以上なため、子爵以下が王都に来ると泊まる場所がない。そのため貴族街の中の宿を利用することになる。

 また、国外からの使節を泊めるときにも使ったりしている。使節のお偉いさんなら王宮の中に泊めるが、随行員やらその随行員が使用したりしている。

 それなので俗にいう『五つ星ホテル』になっている。


 貴族街との境目の門を通り、商人街へ行くと、そこには活気のある商店街は広がっていたが、学生の頃にみた光景に比べたらすこしさびれていた。

「あらら、なにかあったのかね」

 そう言いながら、食料店を回ってみる。どうやら食材の供給が不足しているため、値段が上がっているそうだ。

 あっちこっちから

「値段があがった」とか

「ものが不足している」とかいう声が上がっていた。

 ウチからのがなくなったためか、食料品の値がじわじわと上がっているようだった。


 装飾屋ものぞいてみる。

 ゴードン印の装飾類がどうなっているのかみてみると、やはり二、三割上がっていた。

「婚約の印にこれを買いたかったのだが・・・なんでこんなに値があがっているのだ?」

 若い男性が憤慨していた。

 すまんな、色々あってを絞っているのだよ。と心の中で謝っておく。


 一通り見て回り、冒険者ギルドに近い場所で食事をとろうとしたが、なにか嫌な予感がしたので、回れ右をして別の店に行くことにした。予感には素直に従うことにしている。


 夕方になったら元の宿に戻った。


 ポルコが笑顔で迎えてくれた。そして告げた。

「先ほど、王宮から連絡がありました。明日、ささやかながらパーティーを行うそうです」

「聞いてないけど?」

 普通なら準備の期間があるため、すくなくとも一週間前にはお知らせが来るはずだが。

「前々から決まってたみたいです」

 それだけ言うと、ポルコが頭を下げる。


 なるほど、わざと知らせず、王のパーティーをすっぽかした不届きものってレッテルでも貼ろうとしたのかね。そしたら討伐もしやすくなるわな。

 しかし、僕が爆速で来てしまったので当てが外れたんだろうな。


 予感に従ってよかったよかった、と思うことにしよう。

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