幕間 その2 転生者 三人

 帰ってきて、忙しくしていると、ある日、アリス嬢に呼び出された。なんでも内密にお話がしたいとのことだ。

 

 アリス嬢の部屋に行き入る。執事もお付きのメイドもいなかった。

 本当に内密の話をするということだ。

「こんにちは、アリス様。なにか御用で」

「ごきげんよう、少しお話したいと思いまして」

 そういうと、貴族らしくお茶を進めてきた。そして、お茶を上品に飲むと質問をしてきた。


「ロイス様は21世紀の地球の記憶があるのですか?」

「ありますよ。どこのだれで親はだれで、なんて記憶はありませんがね」

 一息つく。

「ここがゲームの中だと気が付いたのは?」

「10歳くらいかな。学校があるってわかったのがそれくらいですから」

「なぜ学校があるとゲームの中の世界だとわかるんですが?」

「金持ちなら学校に行かせるより、教師を家に呼びます。貴族の同士の交流だって、それぞれでお茶会をやればいいだけですから」

「なるほど・・・・」

「それに、『学校』なんてものがなければ、あなたはここにいないわけですからね」

 そういうと、お茶に口をつける。

「・・・たしかにそうですね」

 しばしの沈黙。


 場の空気を変えるため、ちょっとこの世界のことについて聞いてみるとする。


「アリス様はこのゲームをやってたんですが?」

 その質問に空気が少し和む。

「やっておりました。『クリスタル王国 5人の王子とあなた』という普通の、と言っては失礼ですが、まぁ乙女ゲームでした」

「なるほど」

「それぞれのエンドと誰ともくっつかないエンドと逆ハーレムエンドがありまして、そのどれでも私は断罪され、ここに追放され、寂しく過ごすことになっておりましたわ」

「そうですか」

 田舎だからそういう感じになるんかね。


「ちなみにですが、僕はどのように描かれてました?」

「非常に言いにくいのですが、ほぼ出てなかったです。最後の方に背景として出てくるだけで、セリフなんてものも無かった記憶があります」

「あらら」

 モブどころか背景だったのね。


「でも、ロイス様が転生者で助かりました。王都より快適な生活をしているような気がしてます」

「それは錯覚です。そういう事にしておいてください」

「そうですか?」

「色々と面倒なので」

 なるほどとアリス嬢が頷く。

 そして話は学校のことと、ステファニーの事に及んだ。

 

「とこらで、ロイス様。ステファニーさんは転生者だと思いますか?」

「はい、思いますね」

「理由を聞いても?」

「逆ハーレムを成功させているからです」

 少しの静寂、そして


「逆ハーレムを成功させているという根拠はありますか?」

「こう見えても情報だけは集めてましたからね。彼女がよろしくやってたのも知ってましたし、何より卒業パーティーのあの光景は異常でした。話を聞く限り、エンディングは『落とした相手』と主人公が抱き合い、王子が貴方に追放宣言する構図になります。ですが、あの場には全員が貴方を非難しました。これにより逆ハーレムが成功されたものと考えてました」

 一気に喋るとお茶をのむ。

「わかりました。しかしこれだけでは転生者とはわからないのでは?」

「アリス様はわかると思いますが、見た目は10代、中身30代の女性』が10代の男性相手に本気で『男漁り』をしたらどうなりますか」

 そこまで言うとアリス嬢が首をすくめながら僕の言葉を続ける。

「言い方悪いですが、入れ食いですね」

『もしくは入れられ食いか』

 とかいう恐ろしく下品な言葉を思いついたが、黙っておく事にした。


「それで、これって何が問題になるんですかね?すでにステファニーさんは王と結婚してますよ」

「『制度上は王と結婚しましたが、心はあなたにあります』とかやったんでしょ。そうすればイケメンが自分をずっと夢中になってくれますからね」

「なんか身も蓋もないですね」

「まぁ、巻き込まれた方はたまったもんじゃないですがね。今回の北部平定戦も『ステファニー嬢のハートをつかむのはおれだ!』だったんでしょ。頭ピンクで国を運営しないでほしいですね」

 そしてまたお茶を飲んだ。


 まったく迷惑な話だ。


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次から3章へ移ります。

頑張りますのでイイネとコメントお願いいたします。

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