第3話 利発な子
領都の書庫でリタと一緒に探しものをしている。
探しものは北部の『軍事作戦に耐えうる』地図だ。
この書庫の機密レベルはマックスなので、それなりの『裏切らない人』しか入らさせることはできないし、そういう人は大抵、他の仕事をしている。
そうなると、仕事を他人に振れる当主と、そのお付のメイドが『暇』になるわけで、この膨大な書類の対戦相手にめでたく選ばれたわけだ。
「ロイスさま〜 無いですよ〜」
メイド服ではなくつなぎを着ているリタがうんざりして声を上げる。
「そうか〜。一週間探してなかったら無いんだろうな」
「まだ探しますか〜」
「いや、もう諦めよう。こんだけ探しても無いなら無いんだろ。片付けてお茶にしよう」
「ハイ!」
書庫の片付けが終えて、何個かの鍵をかけて、書庫をでたあと、執務室でリタと一緒にお茶にする。
通常ならお付のメイドと一緒にお茶を飲むなんてことはあり得ないらしいが、僕はそんな事は無視してる。一人で飲んでも味気ないしね。
「ロイスさま。地図が無いと何が大変になるんですか?」
リタが小首を傾けて聞いてくる。
「地図が無いと、高低差がわからない、現在地がわからない。待ち合わせができない、食い物が届けられないなどなどがあるかな」
「なるほど〜、そうなると道を作らないとですね。でしたら測量からですかね」
リタは無学だったが、働き者で努力家である。そして無学だったからといって頭の回転が遅いわけではない。僕は彼女のこういうところが気に入って手元においてるのかもしれない。
「正解!」
僕は拍手をしながら彼女を讃えると、リタはハニカミながら僕の隣に立つと頭を突き出してきた。
僕は頭を撫で撫でしてあげる。
「えへへー」
これ以上無いくらいだらけきった顔をしているが、まぁかわいいからよしとしよう。
「でも、測量隊も作るとなると、護衛がなぁ」
撫で撫でしながら僕が呟く。
「護衛ですか。腕のたつ信頼する人にお願いしないといけないですし、かと言ってそういう人たちは手元に置いておきたいですしね」
思わず撫で撫での手が止まる。
リタが超ドヤ顔をしていたので、ちょっとムカついた。
なのでワシャワシャしてやることにした。
「ふにゃ〜〜」
リタは悲鳴だが歓喜だがネコだかわからん声を出していて、溶けていた。
「冒険者を雇うしか無いかな。かねかるな〜」
などとぼやいていたら、執務室の扉が勢いよく開く。そして
「話は聞かせてもらった〜!」
と女性がドカドカ入ってきた。
「奥さま!」
リタがふにゃはにゃモードから一瞬でメイドモードに切り替わった。素晴らしい。
「母さん。ノックぐらいしてよ」
そこに立っていたのは元冒険者で僕の母親のモニカ・ミツハがだった、
そしてその後ろには、何故かアリス嬢がいた。
「リタ、お茶を入れてあげて」
混乱する頭で、ようやくこの台詞を絞り出した僕をだれか褒めてほしいと思った。
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